No. | ユーザー | DEQXの導入機種とシステムの特長 | 掲載時期 |
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128 | 岡山県 KS氏 | PDC-2.6P / ALTECのA5システムをマルチアンプ駆動に変更 | 2023年02月 |
[ マルチアンプ方式への変更でA5の良さを再確認しました - KS ]
[ 30Wアンプを追加して2Wayマルチアンプ方式に変更した新システム ]
[ L/Cネットワークでドライブされた従来のシステム → User's Report No.126で紹介 ]
5ヶ月ほど前、L/Cネットワーク駆動のA5システムにDEQXを導入し、リモートで調整して頂いて「こんなことならもっと早く導入すれば良かった」と、思ったばかりでした。
そんな中、栗原さんからの提案もあり、更なる音質の向上を期待してマルチアンプ方式に変更しました。
実は今まで使用してきたL/Cネットワーク(N-1208-8A-改)をA5用のN500F-Aに変更しようと思っていたこともあり、その予算でアンプを追加すればより効果的なのではとの思いもありました。
さらに今回はプリアンプをやめて再生機器をダイレクトにDEQXに接続することでシステム全体がシンプルになり、音質の向上にもつながったと考えています。
システムの変更自体はアンプの追加と若干の配線の変更のみでしたが結果的にその効果は極めて大きいと感じました。
肝心な音質の変化ですが、L/Cネットワークを取り去ることでウーファーの音に締まりが出た感じがします。
また高域はドライバーがその役目を正確に果たすようになった感じで、小音量でも中高域がはっきり聴き取れるようになりました。
一台のアンプで38cmウーファーと中高域用のドライバーユニットを一緒に鳴らしていたことや、L/Cネットワークでは低域と高域を完全には分離できていなかったのではと思えるような変わり方でした。
L/Cネットワークによる帯域分割からデジタル方式での分割、そしてアンプとスピーカーユニットがダイレクトに接続されるというマルチアンプ方式の良いところがはっきり伝わってくる感じです。
A5はとても古いシステムですが鳴らし方によってはこんなにもリアルでエネルギー感のある音を出してくれ、現代にも通じる素晴らしいスピーカーだと、改めて感じました。
マルチアンプ方式への変更は予想をはるかに越える成功だったと思います。
岡山県 KS
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■ A5をマルチアンプドライブに
・A5含むALTEC社のAシリーズは「ボイス・オブ・ザ・シアター」と呼ばれ、映画館の拡声用として開発され大成功を収めました。
・今回、改めて測定したA5ユニットの周波数特性を見ていると、映画館における業務用としての側面が見えてきて興味深いところです。
・下図はマルチアンプ用として改めてユニットの特性を測定したものです。
[図1]KS氏がご利用中のA5システムの周波数特性(ホーン軸上1m)
・測定結果をユニット別にもう少し詳しく見てみます。
・下図は高域を受け持つ 288-16Gドライバーと 311-90ホーンの特性です。
[図2]A5システムの高域ユニットによる再生周波数特性
・平均再生レベルから10dBダウンの周波数特性では300Hz~18kHzまでがほぼフラットで、低域側もホーンのカットオフどおりの素晴らしい特性でした。
・次にウーファー部です。
[図3]A5システムの低域ユニットによる再生周波数特性
・低域の特性にはこのシステムの3つの特徴が現れています。
・まず、最低域はバスレフの効果で70Hz前後にピークがあり、60Hz以下はストンと下降しています。
・150Hzから700Hz程度まではフロントロードホーンの効果による音圧の上昇が見られます。
・そして、通常の再生帯域とされる-10dBまでの特性を見ると高域は5kHz付近まで伸びているのが判ります。
・この高域特性については、映画の上映中に高域のドライバーが飛んで(断線)しまった場合、ネットワークをバイパスするとウーファーだけでもなんとかセリフが聴き取れるように設計されていた。とする説もあります。
・実際にはバイパス作業などを瞬時に行うのは簡単ではなく、現実的な対策とは思えませんが、ウーファーの高域特性がALTEC社の業務用としての使命感からだととすれば頷ける話でもあります。
・ちなみに今日的な設計の大型ウーファーではより充実した低域特性を得るため、1kHz以上の高域は結果として大きく減衰しているのが判ります。
・参考までにクリズラボで使用した2機種の特性を載せておきます。
[図4]TAD TL-1601aの再生周波数特性
[図5]SONY SUP-L11の再生周波数特性
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・以上の様なA5の特徴を踏まえた上でDEQXの設定とその結果をご紹介します。
・最初に、図1の測定結果を元に部屋の反射音を取り除いた特性でクロスオーバーを設定したのが下の図です。
[図6]スピーカーユニットの再生特性を元にクロスオーバーを決定
・ここで設定したクロスオーバーとユニットの測定結果を利用してスピーカーの特性を補正するデーターをパソコンが作成します。
・このデーターをDEQXに送って動作させることでチャンネルデバイダー機能を含むマルチアンプでの駆動が可能となります。
・次にマルチアンプシステムとなった状態でリスニングポジションにマイクを置き、部屋の影響を含めた周波数特性を測定します。
・最初に確認のためクロスオーバーのみで測定した周波数特性を示します。
[図7]クロスオーバーの設定のみで測定したシステムの特性
・この状態はデジタル式のチャンネルデバイダーでマルチアンプシステムを組み上げた状態に相当します。
・結果としては見事な「かまぼこ形」の特性を示しました。
・実はこの特性が映画館などにおける大音量再生においては良好な音響効果が得られるものと想像できます。
・150Hz前後の充実した低音(感)の上に、1.2kHz付近の上昇によるセリフの明瞭度の向上が期待できます。そして15kHz付近までの緩やかな下降特性はうるさくはないがしっかりした高域が出ていたのではと思われます。
・ただし、この特性のまま家庭に持ち込めばとても高忠実度再生とはなりませんが、DEQXによる補正効果でスピーカーシステムとしては良好な再生特性を持っています。
・それは、スピーカー単体の「周波数特性」「位相特性」「群遅延特性」、そして「ステップレスポンス」などが改善されているからです。
・このため、図7の特性を元に、部屋の影響を含めたリスニングポジションに於ける伝達周波数特性を補正(Room補正)することで家庭における再生システムとして完成することになります。
[図8]図7の状態にスピーカー補正とルーム補正を実施した特性(P1:標準モード)
・DEQXが持つ基本的な再生モードである4つのProfile(P0~P3)に基本的な設定情報の登録を行います
・多くの場合、P0(Bypass)にはDEQX補正を使わず、クロスオーバーもバターワース特性で12dB/oct.程度に設定した「L/Cネットワーク相当の特性」をセットしますが、これは補正の有無を比較して戴くためです。
・P1には可能な限りフラットな再生が可能となるよう、スピーカー補正とルーム補正を精密の適用した結果を入れて「標準モード」としてセットします。
・残るP2とP3はお好みのジャンルの音楽が心地よく聴けるような特性にセットしています。
・今回はクリズラボが推奨する「1950年代のジャズモード」をP2に、そして「ホールで聴くオーケストラサウンド」のモードをP3にセットしました。
[図9]図8の特性をベースに1950年代のジャズが心地よく聴けるモードを設定
・ソースの特性からP1では物足りない音になりがちな1950年代に録音されたJAZZなどに対し、中高域が張り出した特性にすることで当時の雰囲気やJAZZ喫茶的な音で再現しています。
[図10]図8の特性をベースにシンフォニーなどが心地よく聴けるモードを設定
・次に、コンサートホールでシンフォニーオーケストラなどを聴く場合、演奏者との距離による空間減衰で見た目とは異なり高域がかなり減衰しています。
・実際には高域が減衰した状態で耳に届いていることや、周波数で大きく異なる残響時間の違いなどによって低域のエネルギーが強調されたサウンドで聴いていることになります。
・コテに対して録音ソースは指揮者の位置(頭上)に於けるサウンドバランスに近いことが多いため再生側で状況を再現する必要があります。
・このためRoom補正の段階で低域から高域に向かって緩やかに減衰する特性を創り、P3にセットしました。
・P2とP3についてはお好みに合わせて自由にセットして楽しんで頂きたい部分でもあります。
・特定のジャンルに特化した設定や、この曲は絶対にこの音で鳴って欲しいというものがあれば積極的ににチャレンジしてみたいところです。
・調整結果に不安があればP1でソース自体のクオリティを確認しながら再調整していきます。
・多くのDEQXユーザーさんから、時間を掛けて聞き込むと手持ちソースのほとんどはP1がベストだったという感想を頂きます。
・逆に、P1で良い音がしないソースは録音が良くない、とも言えるでしょう。
・また、時々耳にする話題に、DEQXを入れるとシステムが完成してしまうので遊ぶことができなくなる、というものがあります。
・3WayシステムにDEQをいれて完成していたシステムに対し、ユニットを交換して2Wayにしてみる、あるいは断崖から飛び降りてオールホーンの5Wayにチャレンジした方がいます。
・等々、ユニットやシステムを自由自在に選択し、DEQXをフルに活用してその魅力を最大限に引き出して楽しむことができます。
・今回の例ではアンプを一台追加するだけでL/Cネットワークの弊害を取り去ったマルチアンプ方式への大幅な音質の向上を伴う移行ができました。
・自在な組合せを心ゆくまで楽しめる音質にまで高められるDEQXの魅力を存分にお試し頂ければと思います。
[ 発売間近:4Way対応のNew DEQX ] [ システム構築のお手伝いツール:KLMC-1 ]
・DIYオーディオは今でも趣味の王道としてまだまだやることは山ほどあると思います。
・皆様のチャレンジをお待ちしています。
文責:クリズラボ・栗原
・A5含むALTEC社のAシリーズは「ボイス・オブ・ザ・シアター」と呼ばれ、映画館の拡声用として開発され大成功を収めました。
・今回、改めて測定したA5ユニットの周波数特性を見ていると、映画館における業務用としての側面が見えてきて興味深いところです。
・下図はマルチアンプ用として改めてユニットの特性を測定したものです。
[図1]KS氏がご利用中のA5システムの周波数特性(ホーン軸上1m)
・測定結果をユニット別にもう少し詳しく見てみます。
・下図は高域を受け持つ 288-16Gドライバーと 311-90ホーンの特性です。
[図2]A5システムの高域ユニットによる再生周波数特性
・平均再生レベルから10dBダウンの周波数特性では300Hz~18kHzまでがほぼフラットで、低域側もホーンのカットオフどおりの素晴らしい特性でした。
・次にウーファー部です。
[図3]A5システムの低域ユニットによる再生周波数特性
・低域の特性にはこのシステムの3つの特徴が現れています。
・まず、最低域はバスレフの効果で70Hz前後にピークがあり、60Hz以下はストンと下降しています。
・150Hzから700Hz程度まではフロントロードホーンの効果による音圧の上昇が見られます。
・そして、通常の再生帯域とされる-10dBまでの特性を見ると高域は5kHz付近まで伸びているのが判ります。
・この高域特性については、映画の上映中に高域のドライバーが飛んで(断線)しまった場合、ネットワークをバイパスするとウーファーだけでもなんとかセリフが聴き取れるように設計されていた。とする説もあります。
・実際にはバイパス作業などを瞬時に行うのは簡単ではなく、現実的な対策とは思えませんが、ウーファーの高域特性がALTEC社の業務用としての使命感からだととすれば頷ける話でもあります。
・ちなみに今日的な設計の大型ウーファーではより充実した低域特性を得るため、1kHz以上の高域は結果として大きく減衰しているのが判ります。
・参考までにクリズラボで使用した2機種の特性を載せておきます。
[図4]TAD TL-1601aの再生周波数特性
[図5]SONY SUP-L11の再生周波数特性
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・以上の様なA5の特徴を踏まえた上でDEQXの設定とその結果をご紹介します。
・最初に、図1の測定結果を元に部屋の反射音を取り除いた特性でクロスオーバーを設定したのが下の図です。
[図6]スピーカーユニットの再生特性を元にクロスオーバーを決定
・ここで設定したクロスオーバーとユニットの測定結果を利用してスピーカーの特性を補正するデーターをパソコンが作成します。
・このデーターをDEQXに送って動作させることでチャンネルデバイダー機能を含むマルチアンプでの駆動が可能となります。
・次にマルチアンプシステムとなった状態でリスニングポジションにマイクを置き、部屋の影響を含めた周波数特性を測定します。
・最初に確認のためクロスオーバーのみで測定した周波数特性を示します。
[図7]クロスオーバーの設定のみで測定したシステムの特性
・この状態はデジタル式のチャンネルデバイダーでマルチアンプシステムを組み上げた状態に相当します。
・結果としては見事な「かまぼこ形」の特性を示しました。
・実はこの特性が映画館などにおける大音量再生においては良好な音響効果が得られるものと想像できます。
・150Hz前後の充実した低音(感)の上に、1.2kHz付近の上昇によるセリフの明瞭度の向上が期待できます。そして15kHz付近までの緩やかな下降特性はうるさくはないがしっかりした高域が出ていたのではと思われます。
・ただし、この特性のまま家庭に持ち込めばとても高忠実度再生とはなりませんが、DEQXによる補正効果でスピーカーシステムとしては良好な再生特性を持っています。
・それは、スピーカー単体の「周波数特性」「位相特性」「群遅延特性」、そして「ステップレスポンス」などが改善されているからです。
・このため、図7の特性を元に、部屋の影響を含めたリスニングポジションに於ける伝達周波数特性を補正(Room補正)することで家庭における再生システムとして完成することになります。
[図8]図7の状態にスピーカー補正とルーム補正を実施した特性(P1:標準モード)
・DEQXが持つ基本的な再生モードである4つのProfile(P0~P3)に基本的な設定情報の登録を行います
・多くの場合、P0(Bypass)にはDEQX補正を使わず、クロスオーバーもバターワース特性で12dB/oct.程度に設定した「L/Cネットワーク相当の特性」をセットしますが、これは補正の有無を比較して戴くためです。
・P1には可能な限りフラットな再生が可能となるよう、スピーカー補正とルーム補正を精密の適用した結果を入れて「標準モード」としてセットします。
・残るP2とP3はお好みのジャンルの音楽が心地よく聴けるような特性にセットしています。
・今回はクリズラボが推奨する「1950年代のジャズモード」をP2に、そして「ホールで聴くオーケストラサウンド」のモードをP3にセットしました。
[図9]図8の特性をベースに1950年代のジャズが心地よく聴けるモードを設定
・ソースの特性からP1では物足りない音になりがちな1950年代に録音されたJAZZなどに対し、中高域が張り出した特性にすることで当時の雰囲気やJAZZ喫茶的な音で再現しています。
[図10]図8の特性をベースにシンフォニーなどが心地よく聴けるモードを設定
・次に、コンサートホールでシンフォニーオーケストラなどを聴く場合、演奏者との距離による空間減衰で見た目とは異なり高域がかなり減衰しています。
・実際には高域が減衰した状態で耳に届いていることや、周波数で大きく異なる残響時間の違いなどによって低域のエネルギーが強調されたサウンドで聴いていることになります。
・コテに対して録音ソースは指揮者の位置(頭上)に於けるサウンドバランスに近いことが多いため再生側で状況を再現する必要があります。
・このためRoom補正の段階で低域から高域に向かって緩やかに減衰する特性を創り、P3にセットしました。
・P2とP3についてはお好みに合わせて自由にセットして楽しんで頂きたい部分でもあります。
・特定のジャンルに特化した設定や、この曲は絶対にこの音で鳴って欲しいというものがあれば積極的ににチャレンジしてみたいところです。
・調整結果に不安があればP1でソース自体のクオリティを確認しながら再調整していきます。
・多くのDEQXユーザーさんから、時間を掛けて聞き込むと手持ちソースのほとんどはP1がベストだったという感想を頂きます。
・逆に、P1で良い音がしないソースは録音が良くない、とも言えるでしょう。
・また、時々耳にする話題に、DEQXを入れるとシステムが完成してしまうので遊ぶことができなくなる、というものがあります。
・3WayシステムにDEQをいれて完成していたシステムに対し、ユニットを交換して2Wayにしてみる、あるいは断崖から飛び降りてオールホーンの5Wayにチャレンジした方がいます。
・等々、ユニットやシステムを自由自在に選択し、DEQXをフルに活用してその魅力を最大限に引き出して楽しむことができます。
・今回の例ではアンプを一台追加するだけでL/Cネットワークの弊害を取り去ったマルチアンプ方式への大幅な音質の向上を伴う移行ができました。
・自在な組合せを心ゆくまで楽しめる音質にまで高められるDEQXの魅力を存分にお試し頂ければと思います。
[ 発売間近:4Way対応のNew DEQX ] [ システム構築のお手伝いツール:KLMC-1 ]
・DIYオーディオは今でも趣味の王道としてまだまだやることは山ほどあると思います。
・皆様のチャレンジをお待ちしています。
文責:クリズラボ・栗原