2023-01-V1.0 パワーアンプのゲイン測定や各種の比較試聴ができる Audio Tool
KLMC-1の機能と使い方のご紹介
■ はじめに
■ パワーアンプの増幅度(ゲイン)を知る
■ アンプによるDFの違いと再生音
■ スピーカーとケーブルの比較試聴
■ スーパーツィーターなどの有効性を確認
1.マルチアンプシステムで重要なパワーアンプの増幅度をご存じですか →
2.アンプのDF※で低域の量感や質感が大きく変化することをご存じですか →
※ DF(Dumping Factor:減衰係数)はスピーカーの振動板を制動する強さを示す数値
3.スピーカーやケーブルを徹底的に比較試聴したことはありますか →
4.スーパーツィーター などが有効に機能しているか確認してみませんか →
2.アンプのDF※で低域の量感や質感が大きく変化することをご存じですか →
※ DF(Dumping Factor:減衰係数)はスピーカーの振動板を制動する強さを示す数値
3.スピーカーやケーブルを徹底的に比較試聴したことはありますか →
4.スーパーツィーター などが有効に機能しているか確認してみませんか →
[ KLMC-1の背面写真 ]
■ パワーアンプの増幅度(ゲイン)を知る
「表1」は国産メーカーの代表的なパワーアンプについてカタログからゲイン※とDF値を調べたものです。
※ パワーアンプのゲインは規定の出力が得られる時の入力電圧から計算した値(dB)
A社のものはカタログに記載されている出力(W)と入力感度からゲインを算出した値を表示しています。(dB値の下一桁は計算誤差の範囲です)
2社の最近の製品はゲインが同一(A社:28dB、E社:28.5dB)となっています。 これはシングルアンプ方式のシステムでは大きな意味は持ちませんが、マルチアンプ方式では極めて重要な要素となります。
再生される音量(音圧)はパワーアンプのゲインとスピーカーの能率で決まります。 マルチアンプシステムでは各帯域の再生レベルがそれぞれのパワーアンプのゲインとユニットの能率で決まり、これが再生バランスを決定します。
スピーカーユニットの能率は上記のようにほとんどの製品で公表されていますが、パワーアンプでは表示されていない製品も多々見受けられます。 また、プリメインアンプのパワー部のみを使用するする場合や自作アンプなどではゲインが判らない場合もあるでしょう。
マルチアンプシステムを最初に構築する時はもちろんですが、故障や気分転換(笑)、あるいはグレードアップ等でパワーアンプを交換した場合、アンプのゲインが全く同じであれば問題なく使用できます。
しかし、差が±0.2dB以上になると再生バランス(音質)を変えてしまうため注意が必要です。
マルチアンプシステムでは各チャンネルの受け持ち帯域が広い(通常3〜4オクターブの広い帯域を受け持つ)ため、特定のレベルが僅かでも変化すれば全体の音質に大きな影響を与えることになります。
マルチアンプシステムを構築する場合、使用するアンプのゲインとユニットの能率を調べて各帯域における音圧レベルを計算し、全帯域が±2〜3dB以内※に収まれば理想的です。
※ DEQX利用の場合、ウーファーに対して中高域を2〜3dB高めにセットするのが理想です
これについては、A社の最近のアンプに装備されている4段階のGAINスイッチ(0、-3、-6、-12)を利用することで能率の異なるユニットの再生レベルを最適化することが可能となります。これはマルチアンプ派にとってはとても嬉しい配慮といえるでしょう。
マルチアンプシステムの最終仕上はDEQX※を含むチャンネルデバイダーで帯域別のレベルを微細に調整して全帯域を可能な限りフラットに調整することになります。 ※ DEQXはクロスオーバーを含む帯域を自動的にフラット化することが可能です
この最終調整以前に各帯域の再生レベルが 10〜20dBも異なると最悪の場合、機器の調整可能範囲を越えてしまうこともあります。
このような状態はシステムの土台に大きな問題があると言わざるを得ません。
つまり、マルチアンプシステムでは各帯域の再生レベルが一定の範囲に収まるように最初から設計しておくことは極めて大切な要件なのです。
ここで、私が遭遇した失敗例をご覧下さい。 → → →
こちらのシステムはエール(ALE)のユニットと総合アンプのパワー部など組み合わせて構成されています。
事前にご相談を受けた段階でアンプのゲインを誤って計算したため、現場に行って測定してみると低域と中域の音圧レベルが23dBも異なっていました。
結果的にはパワーアンプの配置変更などを行い最適化して無事に解決しましたが、遠方でもあり一時はどうしようかと冷や汗をかいた記憶があります。
このような事例も含め、使用するアンプのゲインが不明な場合は本機の出番です。簡単な操作でゲインを自分の手で調べることが可能となります。
更に、パワーアンプの出力(測定可能W数)を確認したり、歪みのない1kHzのピュアトーンを普段から聴いておくことで、体重や血圧をデイリーに調べて健康管理に資すると同様、システムの健全性がチェックできると思います。
※ パワーアンプのゲインは規定の出力が得られる時の入力電圧から計算した値(dB)
A社のものはカタログに記載されている出力(W)と入力感度からゲインを算出した値を表示しています。(dB値の下一桁は計算誤差の範囲です)
2社の最近の製品はゲインが同一(A社:28dB、E社:28.5dB)となっています。 これはシングルアンプ方式のシステムでは大きな意味は持ちませんが、マルチアンプ方式では極めて重要な要素となります。
再生される音量(音圧)はパワーアンプのゲインとスピーカーの能率で決まります。 マルチアンプシステムでは各帯域の再生レベルがそれぞれのパワーアンプのゲインとユニットの能率で決まり、これが再生バランスを決定します。
[ スピーカーユニットのカタログに明記された感度(能率)表示の例 ]
スピーカーユニットの能率は上記のようにほとんどの製品で公表されていますが、パワーアンプでは表示されていない製品も多々見受けられます。 また、プリメインアンプのパワー部のみを使用するする場合や自作アンプなどではゲインが判らない場合もあるでしょう。
マルチアンプシステムを最初に構築する時はもちろんですが、故障や気分転換(笑)、あるいはグレードアップ等でパワーアンプを交換した場合、アンプのゲインが全く同じであれば問題なく使用できます。
しかし、差が±0.2dB以上になると再生バランス(音質)を変えてしまうため注意が必要です。
マルチアンプシステムでは各チャンネルの受け持ち帯域が広い(通常3〜4オクターブの広い帯域を受け持つ)ため、特定のレベルが僅かでも変化すれば全体の音質に大きな影響を与えることになります。
マルチアンプシステムを構築する場合、使用するアンプのゲインとユニットの能率を調べて各帯域における音圧レベルを計算し、全帯域が±2〜3dB以内※に収まれば理想的です。
※ DEQX利用の場合、ウーファーに対して中高域を2〜3dB高めにセットするのが理想です
これについては、A社の最近のアンプに装備されている4段階のGAINスイッチ(0、-3、-6、-12)を利用することで能率の異なるユニットの再生レベルを最適化することが可能となります。これはマルチアンプ派にとってはとても嬉しい配慮といえるでしょう。
[ A社製アンプのゲインスイッチ]
マルチアンプシステムの最終仕上はDEQX※を含むチャンネルデバイダーで帯域別のレベルを微細に調整して全帯域を可能な限りフラットに調整することになります。 ※ DEQXはクロスオーバーを含む帯域を自動的にフラット化することが可能です
この最終調整以前に各帯域の再生レベルが 10〜20dBも異なると最悪の場合、機器の調整可能範囲を越えてしまうこともあります。
このような状態はシステムの土台に大きな問題があると言わざるを得ません。
つまり、マルチアンプシステムでは各帯域の再生レベルが一定の範囲に収まるように最初から設計しておくことは極めて大切な要件なのです。
ここで、私が遭遇した失敗例をご覧下さい。 → → →
こちらのシステムはエール(ALE)のユニットと総合アンプのパワー部など組み合わせて構成されています。
事前にご相談を受けた段階でアンプのゲインを誤って計算したため、現場に行って測定してみると低域と中域の音圧レベルが23dBも異なっていました。
結果的にはパワーアンプの配置変更などを行い最適化して無事に解決しましたが、遠方でもあり一時はどうしようかと冷や汗をかいた記憶があります。
このような事例も含め、
更に、パワーアンプの出力(測定可能W数)を確認したり、歪みのない1kHzのピュアトーンを普段から聴いておくことで、体重や血圧をデイリーに調べて健康管理に資すると同様、システムの健全性がチェックできると思います。
[ KLMC-1のフロントパネル ]
■ アンプによるDFの違いと再生音
DF(Dumping Factor:減衰係数)はアンプの出力インピーダンスと、駆動するユニットやスピーカーシステムとのインピーダンス※の比を数値で表したものです。
※ DFは8Ωの負荷(スピーカー)で計算します。4Ωなら半分、16Ωなら倍の値になります
DFが大きいほどユニットのボイスコイルに生じる逆起電力を減衰(吸収)する力が高まり、振動板を正確に動作させることが可能です。
ただし、DFが大きいほど音が良いという単純なことではなく、スピーカーユニットやスピーカーシステムにはそれぞれに最適なDF値が存在します。
ご存じのようにスピーカーユニットには標準的な8Ωの他に、4Ω、16Ωなどがあります。この値はボイスコイルに交流信号を流した時の抵抗値です。
平面型などの一部のユニットを除けばこのインピーダンスは一定ではなく、周波数や振動板の動作状態で大きく変化します。このためDF値をあまり厳密に考えても意味はありません。
ここではタイプの異なるアンプで共通して見られる3段階のDFでスピーカーとの関係を見ていきます。
パワーアンプの出力インピーダンスはアンプを構成する素子と回路、そしてNFBの有無やその程度でほぼ決まります。
■3極管シングルで無帰還 のアンプの場合、出力インピーダンスは通常 2〜4Ω程度となるため 8Ωのユニットを駆動した場合のDFは 2〜4程度 となります。
■真空管式のプッシュプルでNFB有り の場合、0.5〜1.0Ω程度の出力インピーダンスとなり、DFは8〜16程度 です。
■半導体の素子出力に十分なNFBを掛けた 場合、出力インピーダンスは 0.1〜0.01Ω程度まで下がるため、DFは80〜800程度 と高くなります。
それぞれのアンプにおけるDFの中心値を4、10、100 程度とすると、これらのDF値が再生音にどのような影響を及ぼすか考えてみましょう。
これを考える上で大切な要素となるのはそれぞれのスピーカーユニットやシステムが開発された年代があります。
パワーアンプが真空管式しか存在しない時代(概ね1960年代後半まで)に開発されたスピーカーユニットやシステム は当然ながら真空管アンプでドライブして研究開発が行われました。この場合のDF値は4〜10前後 と考えられます。
1970年以降は半導体アンプが主流 となったためスピーカーの開発もDFが100以上のアンプでドライブ されることが多くなったことは当然の成り行きです。
つまり、スピーカーが開発された時期が1960年以前か1970年以降かでDF値が大きく異なる事態が生じたと考えられます。
この結果、真空管アンプの時代に開発されたスピーカーは前述のようにアンプによる制動があまり期待できません。
そんな中で減衰特性に優れた歯切れの良い音を実現するため、軽量の振動板と堅めのダンパーを組み合わせてユニット自身で振動板を制動できる仕組みが重要となっていました。
1970年代以降、半導体アンプが全盛になってくるとボイスコイルの逆起電力をアンプが吸収してくれて振動板を制動してくれるようになりました。
アンプによる制動効果が期待できれば真空管アンプの時代とは逆に、重めの振動板をフラフラのエッジと柔らかいダンパーで支えても良好な減衰特性が得られることになります。
この効果は絶大で、振動板の質量が増加することでユニットの低域共振周波数が下がり、フラフラのエッジで大きなストロークも可能となり、低域の再生能力が飛躍的に向上しました。
■ ここでDFの効果を実感してみましょう。
手元に口径が20p以上のウーファーかフルレンジのユニットがあればそれで、マルチアンプシステムの方なら低音用のユニットからダイレクトに引き出されているターミナルで実験できます。
最初にユニットのボイスコイルへの配線をオープンにします。
この状態でユニットの正面からボイスコイル付近を指でそっと押してみます。1970年以降に開発されたf0の低いユニットであればなおさらですが、弱い力でもコーン紙が前後に楽に動くことが確認できると思います。
次にボイスコイルの端子または接続ターミナルをショートして同じように押してみて下さい。
端子が解放されている場合と比べて振動板が動きにくくなっていることが実感できる※と思います。
※ KLMC-1で端子のショートと解放をローカルまたはリモートで切替ながら実験ができます
この実験で端子がオープンだとDFがゼロの場合に相当します。逆にショートするとDFは最大となりますが、この状態でも僅かに残る抵抗分を0.01ΩとすればDFは計算上800となり、最近の半導体アンプに近い状態と考えられます。
次に、この実験結果と実際の音質の変化を考えてみましょう。
1960年以前に開発された完成度の高いスピーカーユニットやシステム(ビンテージものと言われるような製品)をDFが高い最近の半導体アンプでドライブした場合を考えてみます。
この場合、ユニットそのものの高い制動力とアンプのDFによる制動効果がダブルで効くため、いわゆる過制動(オーバーダンプ)の状態となります。
その結果、低域の伸びや量感が乏しくなり、中高域が強調された音質となる可能性が高いと考えられます。
私自身、10数年前にこの効果を目の当たりにしました。
山梨県の某オーディオショップを訪れた時、店長さんが運良く入手したという1940年代のウェスタン・エレクトリック製755Aユニットを50g程度の箱に入れたスピーカーと対峙していました。
店長さんは展示品の最新型(半導体)アンプを持ち出してきて接続し、音楽を鳴らしていました。
私も一緒に聞いていましたが、中高域に魅力的なサウンドは感じるものの低音が貧弱で潤いのない音が鳴っていていました。ビンテージものと言ってもこれを長時間聴くには、と首をかしげてしまいました。
店長さんも同じ思いだったのか、店の奥から年代物と思われる管球式パワーアンプを持ち出してきました。さっそく同じCDを鳴らしてみると今度はなんともフワッとした豊かな低音が出てくるではないですか。
その低音の上にややくすんだトーンではありますが開放的で力強い音楽が心地よく鳴り出しました。
しばらくすると隣にいた店長さんの独り言が聞こえてきました。
「これだから今時のアンプはダメなんだ。音楽が聴こえてこない。」・・・
この店長さんが最新のスピーカーをビンテージものの真空管アンプで鳴らして「低音が膨らんで締まりがないな」 などと囁かないことを祈りつつお店を後にしました。
振動板の不要振動を減衰させてくれるDFですが、スピーカーの低域再生能力に影響する度合はそのスピーカーの設計年代によって大きく異なるのだと思います。
いずれにしても、DFが4程度の管球式アンプと数百以上の半導体アンプではスピーカーとの間で相性とも言える影響が出てくる可能性は高いと言えるでしょう。
ビンテージもののスピーカーを最新の半導体アンプで駆動する、あるいは現代的な設計のスピーカーをDFが10以下の真空管アンプで鳴らす場合、上記のような相性の問題が発生していないか、一度確認してみてはいかがでしょうか。
※ DFは8Ωの負荷(スピーカー)で計算します。4Ωなら半分、16Ωなら倍の値になります
DFが大きいほどユニットのボイスコイルに生じる逆起電力を減衰(吸収)する力が高まり、振動板を正確に動作させることが可能です。
ただし、DFが大きいほど音が良いという単純なことではなく、スピーカーユニットやスピーカーシステムにはそれぞれに最適なDF値が存在します。
ご存じのようにスピーカーユニットには標準的な8Ωの他に、4Ω、16Ωなどがあります。この値はボイスコイルに交流信号を流した時の抵抗値です。
平面型などの一部のユニットを除けばこのインピーダンスは一定ではなく、周波数や振動板の動作状態で大きく変化します。このためDF値をあまり厳密に考えても意味はありません。
[ スピーカーユニットの代表的なインピーダンス特性 ]
ここではタイプの異なるアンプで共通して見られる3段階のDFでスピーカーとの関係を見ていきます。
パワーアンプの出力インピーダンスはアンプを構成する素子と回路、そしてNFBの有無やその程度でほぼ決まります。
■
■
■
それぞれのアンプにおけるDFの中心値を
これを考える上で大切な要素となるのはそれぞれのスピーカーユニットやシステムが開発された年代があります。
パワーアンプが
つまり、スピーカーが開発された時期が1960年以前か1970年以降かでDF値が大きく異なる事態が生じたと考えられます。
この結果、真空管アンプの時代に開発されたスピーカーは前述のようにアンプによる制動があまり期待できません。
そんな中で減衰特性に優れた歯切れの良い音を実現するため、軽量の振動板と堅めのダンパーを組み合わせてユニット自身で振動板を制動できる仕組みが重要となっていました。
1970年代以降、半導体アンプが全盛になってくるとボイスコイルの逆起電力をアンプが吸収してくれて振動板を制動してくれるようになりました。
アンプによる制動効果が期待できれば真空管アンプの時代とは逆に、重めの振動板をフラフラのエッジと柔らかいダンパーで支えても良好な減衰特性が得られることになります。
この効果は絶大で、振動板の質量が増加することでユニットの低域共振周波数が下がり、フラフラのエッジで大きなストロークも可能となり、低域の再生能力が飛躍的に向上しました。
■ ここでDFの効果を実感してみましょう。
手元に口径が20p以上のウーファーかフルレンジのユニットがあればそれで、マルチアンプシステムの方なら低音用のユニットからダイレクトに引き出されているターミナルで実験できます。
最初にユニットのボイスコイルへの配線をオープンにします。
この状態でユニットの正面からボイスコイル付近を指でそっと押してみます。1970年以降に開発されたf0の低いユニットであればなおさらですが、弱い力でもコーン紙が前後に楽に動くことが確認できると思います。
次にボイスコイルの端子または接続ターミナルをショートして同じように押してみて下さい。
端子が解放されている場合と比べて振動板が動きにくくなっていることが実感できる※と思います。
※ KLMC-1で端子のショートと解放をローカルまたはリモートで切替ながら実験ができます
この実験で端子がオープンだとDFがゼロの場合に相当します。逆にショートするとDFは最大となりますが、この状態でも僅かに残る抵抗分を0.01ΩとすればDFは計算上800となり、最近の半導体アンプに近い状態と考えられます。
次に、この実験結果と実際の音質の変化を考えてみましょう。
1960年以前に開発された完成度の高いスピーカーユニットやシステム(ビンテージものと言われるような製品)をDFが高い最近の半導体アンプでドライブした場合を考えてみます。
この場合、ユニットそのものの高い制動力とアンプのDFによる制動効果がダブルで効くため、いわゆる過制動(オーバーダンプ)の状態となります。
その結果、低域の伸びや量感が乏しくなり、中高域が強調された音質となる可能性が高いと考えられます。
私自身、10数年前にこの効果を目の当たりにしました。
山梨県の某オーディオショップを訪れた時、店長さんが運良く入手したという1940年代のウェスタン・エレクトリック製755Aユニットを50g程度の箱に入れたスピーカーと対峙していました。
店長さんは展示品の最新型(半導体)アンプを持ち出してきて接続し、音楽を鳴らしていました。
私も一緒に聞いていましたが、中高域に魅力的なサウンドは感じるものの低音が貧弱で潤いのない音が鳴っていていました。ビンテージものと言ってもこれを長時間聴くには、と首をかしげてしまいました。
店長さんも同じ思いだったのか、店の奥から年代物と思われる管球式パワーアンプを持ち出してきました。さっそく同じCDを鳴らしてみると今度はなんともフワッとした豊かな低音が出てくるではないですか。
その低音の上にややくすんだトーンではありますが開放的で力強い音楽が心地よく鳴り出しました。
しばらくすると隣にいた店長さんの独り言が聞こえてきました。
この店長さんが最新のスピーカーをビンテージものの真空管アンプで鳴らして
振動板の不要振動を減衰させてくれるDFですが、スピーカーの低域再生能力に影響する度合はそのスピーカーの設計年代によって大きく異なるのだと思います。
いずれにしても、DFが4程度の管球式アンプと数百以上の半導体アンプではスピーカーとの間で相性とも言える影響が出てくる可能性は高いと言えるでしょう。
[ 最近の半導体アンプのDFを4程度まで下げてドライブする実験ができます ]
■ スピーカーとケーブルの比較試聴
スピーカーやケーブルの比較試聴をするには接続を換える必要があります。
逆に言えば交換すれば比較はできますが、ケーブルの交換や接続の変更は意外に面倒で、それなりの作業時間も必要です。
また、その都度ケーブルや接続を変更しているとその間に以前の音の記憶がなくなってしまう可能性が大です。
極端に言えばこの方法では何回やっても「正確な比較」にはならない可能性があるとも言えます。
もっとも、念願叶って購入したスピーカーシステムや、財務大臣の目を盗み、崖から飛び降りる思いで購入した高価なケーブルは従来のものより絶対に良いはずなので比較する必要もない ・・・のかもしれません。
ところで、絵画や写真などは時の流れが止まっても存在し、二つの作品を並べて見比べることも可能です。
これに対して音は時間の流れの中でしか存在できず、さらに、二つの音を同時に聞きながら正確に認識して比較できるのはお釈迦様 だけです。
例え一つの音源でも、それが停止した瞬間に流れていた音も、そして記憶も消滅し、脳内に曖昧な記憶が残るだけです。
こうした音の性質上、比較するためにはいつでも好きな時にワンタッチで切り替えることが可能なシステムが理想的であり現実的です。
このシステムなら比較するA/Bを瞬時に切り替えることも可能ですが、この方法の問題点は切り替えるタイミングによって出てくる音がその都度異なることです。このことが評価に大きな影響を与える可能性が高いのです。
このため通常は一定の時間を決めて音楽の同じフレーズで切り替える方法が正確に比較できるとされています。しかし、これも「時間の記憶」の問題があり難しいところです。
私がこの方法で行う場合は注目するポイントを決めて繰り返し聞き、違いが判れば別のポイントでまた判るまで比較します。
瞬時切替はソロ楽器やソロボーカルなどであれば切替のタイミングによる音の違いが少ないのである程度の比較は可能だと思います。
■ 次に、比較試聴する際の音の大きさについて考えます。
同じ音源で同じ条件なのに音量が異なるだけで印象が大きく変わることはよく経験します。(大きい方が概ね高評価となる)
人は2dB(デシベル)以上の変化があれば音量の違いを感じると言われます。
このため、比較する場合は両者の音量差を2dB以下にすることが大切な条件となります。
ここではスピーカーとスピーカーケーブルの比較を想定していますが、ケーブルは基本的に音量の違いは出ません
これに対して異なるスピーカーの音量を完全に一致させることは事実上不可能なのです。
ケーブルは信号をフラットに伝送できますが、スピーカーは耳に届くまでの伝送周波数特性が極めて複雑で、それぞれの製品に固有な周波数特性や指向特性を持ち、音源や部屋との関係にも左右されるため、音量を一致させることができないのです。
現実的にはボーカルやピアノなどのソロ演奏を中心に聞き比べを行い、音量を合わせることをお薦めします。
この時、先ほどの瞬時切替で聞き比べると微妙なレベルの差が分かりやすいので本格試聴の前にレベルの差を確認しておきましょう。
この時、DEQXをご利用中であればパソコンに接続することで画面から精密なボリュームレベルの情報が得られますので同一音量となった時のレベルを書き留め、本格的な試聴時にこのレベル差をセットすると便利です。
また、マルチアンプ対応のクリズラボ製ATT(KL-AT-6D)がシステムに入っていれば1dB単位でのレベルが確認出来、切替時のレベル調整もワンタアクションで実施出来ます。
さて、人の五感は相対値にはかなり敏感だが絶対値の記憶は極めて曖昧だと言われます。特に聴覚は近くで聞くジェット機の騒音(140dB) から深夜の郊外でやっと聴き取れる人の囁き声(0dB) まで、実に1,000万倍の音圧の違い に対応する必要があります。このためその時々の環境に即した感度に自動的に調整されます。
このため、一般的な日常生活においても、朝と昼と深夜、昨日と今日、室内と室外、電車の中などで耳の感度は大きく異なります。また風邪を発症すれば低域の感度が落ちるなど、聴覚の状態は時々刻々と変化しているのが実態です。
さらに再生時の音量によっても耳の特性が大きく変化(ラウドネス特性)することが分かっています。
これらのことからオーディオ機器の音質比較では聴覚の特性を十分に意識しながら、少なくとも数日から数週間、できればそれ以上の時間をかけて何度も比較してみることを強くお薦めします。
オーディオの世界ではファーストインプレッションだけで決定的な評価がなされてしまうことも少なくないと感じます。人の意見だけに頼らず、自身の耳で納得のゆくまで評価した上で財務省にも易しく、そして賢い選択をされることを強くお薦めします。
逆に言えば交換すれば比較はできますが、ケーブルの交換や接続の変更は意外に面倒で、それなりの作業時間も必要です。
また、その都度ケーブルや接続を変更しているとその間に以前の音の記憶がなくなってしまう可能性が大です。
極端に言えばこの方法では何回やっても「正確な比較」にはならない可能性があるとも言えます。
もっとも、念願叶って購入したスピーカーシステムや、財務大臣の目を盗み、崖から飛び降りる思いで購入した高価なケーブルは
ところで、絵画や写真などは時の流れが止まっても存在し、二つの作品を並べて見比べることも可能です。
これに対して音は時間の流れの中でしか存在できず、さらに、二つの音を同時に聞きながら正確に認識して比較できるのは
例え一つの音源でも、それが停止した瞬間に流れていた音も、そして記憶も消滅し、脳内に曖昧な記憶が残るだけです。
こうした音の性質上、比較するためにはいつでも好きな時にワンタッチで切り替えることが可能なシステムが理想的であり現実的です。
このシステムなら比較するA/Bを瞬時に切り替えることも可能ですが、この方法の問題点は切り替えるタイミングによって出てくる音がその都度異なることです。このことが評価に大きな影響を与える可能性が高いのです。
このため通常は一定の時間を決めて音楽の同じフレーズで切り替える方法が正確に比較できるとされています。しかし、これも「時間の記憶」の問題があり難しいところです。
私がこの方法で行う場合は注目するポイントを決めて繰り返し聞き、違いが判れば別のポイントでまた判るまで比較します。
瞬時切替はソロ楽器やソロボーカルなどであれば切替のタイミングによる音の違いが少ないのである程度の比較は可能だと思います。
■ 次に、比較試聴する際の音の大きさについて考えます。
同じ音源で同じ条件なのに音量が異なるだけで印象が大きく変わることはよく経験します。(大きい方が概ね高評価となる)
人は2dB(デシベル)以上の変化があれば音量の違いを感じると言われます。
このため、比較する場合は両者の音量差を2dB以下にすることが大切な条件となります。
ここではスピーカーとスピーカーケーブルの比較を想定していますが、ケーブルは基本的に音量の違いは出ません
これに対して異なるスピーカーの音量を完全に一致させることは事実上不可能なのです。
ケーブルは信号をフラットに伝送できますが、スピーカーは耳に届くまでの伝送周波数特性が極めて複雑で、それぞれの製品に固有な周波数特性や指向特性を持ち、音源や部屋との関係にも左右されるため、音量を一致させることができないのです。
現実的にはボーカルやピアノなどのソロ演奏を中心に聞き比べを行い、音量を合わせることをお薦めします。
この時、先ほどの瞬時切替で聞き比べると微妙なレベルの差が分かりやすいので本格試聴の前にレベルの差を確認しておきましょう。
この時、DEQXをご利用中であればパソコンに接続することで画面から精密なボリュームレベルの情報が得られますので同一音量となった時のレベルを書き留め、本格的な試聴時にこのレベル差をセットすると便利です。
[ DEQXにPCを接続すれば精密なボリューム情報が得られます ]
また、マルチアンプ対応のクリズラボ製ATT(KL-AT-6D)がシステムに入っていれば1dB単位でのレベルが確認出来、切替時のレベル調整もワンタアクションで実施出来ます。
[ クリズラボ製ATT:KL-AT-6D ]
さて、人の五感は相対値にはかなり敏感だが絶対値の記憶は極めて曖昧だと言われます。特に聴覚は
このため、一般的な日常生活においても、朝と昼と深夜、昨日と今日、室内と室外、電車の中などで耳の感度は大きく異なります。また風邪を発症すれば低域の感度が落ちるなど、聴覚の状態は時々刻々と変化しているのが実態です。
さらに再生時の音量によっても耳の特性が大きく変化(ラウドネス特性)することが分かっています。
これらのことからオーディオ機器の音質比較では聴覚の特性を十分に意識しながら、少なくとも数日から数週間、できればそれ以上の時間をかけて何度も比較してみることを強くお薦めします。
オーディオの世界ではファーストインプレッションだけで決定的な評価がなされてしまうことも少なくないと感じます。
[ KLMC-1の内部 ]
■ スーパーツィーターなどの有効性を確認
一時期、20kHz以上を再生するというスーパーツィーターが流行りました。
耳では聞こえないが肌で感じる。脳を刺激してアルファー波を誘発されているようだ。音の鮮度が向上し音像をよりクリアにする。倍音成分が聴こえることで心地良くなる。温かみを感じる。細かい音がよりシャープになる。
・・・等々、諸説あるようですが、貴方はどの感覚を覚えますか?
スーパーツィーターを鳴らすためにクロスオーバーを決めて専用アンプでドライブしている方は少ないかもしれません。
既存のツィーターに追加する形で利用されている方が多いのではと思います。
接続方法はどちらでも良いのですがこのスーパーツィーターをON/OFFしてその存在理由(価値)を確認するというチャレンジはいかがでしょうか。
この場合、スピーカーシステムの比較試聴とは異なり、スーパーツィーターの存在意義を確認出来れば良いことになります。
ユニットからの再生音をカットするだけなら接続を外せば良いのですが、貴方の感覚を最高度に研ぎ澄ます必要があると思います。
頭と身体を固定して手元のリモコンでユニットのON/OFFができる本機の利用を強くお薦めすると同時に、数ヶ月といった長期の検証も行うことで新たな発見があるかもしれません。
耳では聞こえないが肌で感じる。脳を刺激してアルファー波を誘発されているようだ。音の鮮度が向上し音像をよりクリアにする。倍音成分が聴こえることで心地良くなる。温かみを感じる。細かい音がよりシャープになる。
・・・等々、諸説あるようですが、貴方はどの感覚を覚えますか?
スーパーツィーターを鳴らすためにクロスオーバーを決めて専用アンプでドライブしている方は少ないかもしれません。
既存のツィーターに追加する形で利用されている方が多いのではと思います。
接続方法はどちらでも良いのですがこのスーパーツィーターをON/OFFしてその存在理由(価値)を確認するというチャレンジはいかがでしょうか。
この場合、スピーカーシステムの比較試聴とは異なり、スーパーツィーターの存在意義を確認出来れば良いことになります。
ユニットからの再生音をカットするだけなら接続を外せば良いのですが、貴方の感覚を最高度に研ぎ澄ます必要があると思います。
[ KLMC-1のリモートBOXでA/B切替や疑似DFの切替ができます ]