No. | ユーザー | DEQXの導入機種とシステムの特長 | 掲載時期 |
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131 | 長野県 YA様 | PDC-2.6P / 大人の隠れ家にオーディオのおもちゃ箱を発見! | 2024年11月 |
[ DEQX(PDC-2.6P)導入後のシステム全景]
[ DEQX(PDC-2.6P)導入後のシステム系統図]
■ 感 想 文
D-130の過度応答の良さを最大に生かすべく、自作平面バッフルに装着して075との2way+往年の銘器YST-SW1000というシンプルな装置にてスタートした我が装置は、平面バッフル後方の空間処理という難題を抱え続けていました。
[ DEQXを導入する前のオリジナルシステム ]
[ YA氏製作のシステム系統図(DEQX導入前) ]
dbx driverack260の制御下にJBL 2446J(ダイヤフラムをRADIAN1245に改装)を追加することによって、従来モヤモヤしていた映画のセリフが聞きやすくなり、中高音についてはそこそこ満足できていました。
[ 平面バッフル+JBLユニットによるスピーカーシステムと背面の吸音処理の様子 ]
しかし、スクリーンの設置用にスピーカー背面上方に設けたフランジによって定在波が発生しているためかどうかわかりませんが、低音域の音像がはっきりせず、バスドラとベースがどこにいるのか、よくわからないという状況にありました。
平面バッフル後方にクッションや吸音材を置いたり、dbxによってYST-SW1000とD-130 間の位相をいじってみましたが抜本的な効果には至りません。根治治療としては DEQX が特効薬になるはずとHPをにらんでいましたが、主に価格の問題でイマイチ決心がつかずにいました。
そこに、PDC-2.6Pの中古品がお手頃価格で入手可能という、神の祝福としか思えないニュースが目に留まり、急ぎポチりました。
軽井沢のクリズラボ本社から車で30分程度の山の中にある我が家に、下見がてらに栗原さんがおいでになりました。
まずは現状を聴いてみましょうとのことで、栗原さんが知り尽くしているロバータガンバリーニの名盤easy to loveから冒頭のeasy to loveをかけました。
試聴を終えた栗原さんの顔色はやはりイマイチ冴えません。
優しい栗原さんは、「聴きやすいです」という微妙な感想を苦しそうに絞り出しておられましたが、再生音に大きな問題が起きていることは明白でした。
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さて、8月某日の調整の日、世界的な異常気象の影響は例外なく軽井沢にも押し寄せ軽井沢の中では少し高い標高にある我が家でも気温は30度を超えていました。
そんな中、締め切った部屋で汗を拭き拭き頑張っていただきました。
私は、栗原さんの水筒に氷を補給したり、測定の合間に扇風機のスイッチを入れるなど、医学的な面からの後方支援に励みました。
部屋の特性の測定では、過去に経験した中では屈指のフラッターエコーが発生していると望外のお言葉をいただきました(苦笑)。
[ システムと対話する最近太り気味の調整マン(栗原) ]
傾斜屋根で天井高は5m程度あるのですが、側面が平行面で、なおかつ家具が少ないためと思われます。
我がシステムは変則 4wayで構成されており、3Way対応のPDC-2.6では1Way分足りません。
栗原さんから、075と2446Jをコンデンサーで結線している現状のままとし、2446J以下をPDC-2.6でコントロールする方法をご推薦いただきました。
各ユニットF特の測定結果を元にクロスオーバーを80Hzと600Hzに決定し周波数特性の調整を行いましたが、ここでひとつ問題が起きました。075に結合しているコンデンサーの容量(0.47μF)が小さすぎ、高音がだら下がりになっています。
結局、パライコで中域の能率を若干落とすことにより無事に対応できました。
一方、D-130 は単体でも実用的には約50Hzまで伸びており、90㎝X90cm という比較的小さな平面バッフルにしては頑張っているなと小さな驚きもありました。
YST-SW1000は平面バッフルの約50㎝後方に設置されています。
従来はこれをプリ直結とし、D-130に50㎝のdelayをかけていました。
[ JBLユニットのメインSPシステム(3Way)とヤマハのサブウーファー ]
今回、周波数特性を調整した段階でYST-SW1000とD-130の位相(遅延量)を比較したところ、中高域ユニットの特性補正に伴う遅延が奇跡的に後方に置かれたサブウーファーの位置に一致することが判明。
偶然とは言え、中高域とサブウーファー間の更なる距離調整は不要と判断されました。
このように、ユニットから出力されている音波の位相をリアルタイムでモニターできることが、DEQXの大きな長所のひとつと思います。
調整が終わり、再度easy to loveを試聴した栗原さんの表情は明らかに初回とは異なり、安堵の色がうかがえました。
「好きな音になりました」と言い残して帰られましたが、以前はかなり嫌いな音だったのだなあと申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
[ 38㎝ウーファーが小さく見える夢のようなオーディオ空間でした(栗原) ]
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その後、聴きなれたソースを聴きまくっていますが、低音の解像度向上はもちろんのこと、クラシックにおいてハーモニーが美しく溶け合うようになったことに感心しています。
元々F特はそこそこ平坦となっていたはずですが、それに加えて位相調整の効果がここにも表れたものと思います。
DEQXの導入によってオーディオが終わるのではないかと、実は薄々恐れを感じており、それも導入が遅れた原因の一つでした。
ところがその劇的な効果を目の当たりにすると、終わるどころか更なる挑戦へ向けて闘志をかきたてられています。
とはいえDEQXは、私のような文系人間には、まだまだかなり手ごわいのも事実で、栗原さんの益々のご健康を心から願わざるを得ません。お近くですし、引き続きご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
軽井沢にて YA
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DEQX調整本番の日に備えて道順の確認とシステムの下見に伺いました。
お部屋に入った途端、男子あこがれの隠れ家にオーディオのおもちゃ箱をひっくり返したような素敵なシステムが・・・
多くの方の再生装置とオーディオルームを拝見してきましたが、ここまで「遊び心満載のオーディオ」を堪能されている方にお目にかかったのは初めてでした。
その二日後、DEQXの設定日を迎えました。
避暑地とは思えない猛暑の中、更に周囲の環境を破壊するDEQXの調整音(笑)が漏れないようにと閉め切った室内は体脂肪の燃焼には最適な空間でした。
早速、現状のシステムを測定。
まずは低域のD130と中域の2446のレベルバランスがドンピシャリ。「ムム、お主やるな(笑)」というのが正直な感想でした。(下図参照)
ただし、2446Jの高域を補完する075にはもう少し頑張って欲しい感じです。
YA氏の提案で075をFostex製のツィーターに変更したところ10kHz以上が僅かに改善されますが(下図)、五十歩百歩なのでJBLのユニットで統一することで意見が一致しました。
測定結果から導かれたインパルス応答は下図のようになりました。
3個のユニットは設置された状態通りに素直に応答していますが、これらの他に時間的にかなり接近した位置に強めの反射音が確認出来ます。
DEQXの補正処理における原則に従えば2446Jが立ち下がった直後に反射音と分離する線(グリーン)を置くことになりますが、これだと補正に必要なユニットの直接音成分がなくなってしまいます。
室内の反射音対策は当面無理なので今回はやや変則的ですが初期反射音込みの特性でスピーカー補正を実施することにします。
その結果が下図で、ユニットの直接音と壁の反射を含んだ特性となります。
フルレンジユニットとして開発されたD130は38㎝という大口径にもかかわらず高域が5kHzまで伸びている(-10dB)のが判ります。
しかし、ボーカルなどの質感を考えるとクロスオーバーは出来るだけ低くしたいので2446Jが完全に立ち上がる600Hzとしました。
ちなみにDEQXのスピーカー補正がない場合と比較できるようにクロスオーバーのみの設定も設けました。(下図)
次にサブウーファーを含めた総合的なクロスオーバーを組み込みます。
サブウーファーにもDEQXによる補正は可能ですがYST-SW1000の特性を信じて今回はスピーカー補正なしで使う事にしました。
ただ、SW1000はローパスフィルターが24dB/oct.のアナログ式なので、ここはDEQXのリニアフェイズフィルターで急峻にカットしてD130+平面バッフルの特徴を最大限に活かす工夫をしました。(下図)
スピーカーの測定データーを元にユニットの補正フィルターとクロスオーバーを決定し、完成したデーターをDEQXに送り込むとスピーカーの設定が完了です。
[ メインの再生機器と200Vからステップダウンする電源システム ]
次は補正が完了したスピーカーで測定信号を再生し、リスニングポジションに於ける伝達周波数特性を測定します。
下の図はSP補正のみでルーム補正を行う前の結果です。
D130と2446Jが受け持つ帯域についてはDEQXのスピーカー補正によって150Hzから10kHz程度まではほぼフラットに再生されているはずです。
ところが聴取位置では300Hz付近に6dBを超える大きなピークが生じています。
再生するスピーカーに存在しないピークが受音点(聴取位置)で生じていますのでこれは部屋の影響と考えられます。
この300Hz付近は再生音に特徴的な影響がある帯域で、大きなピークがあると一般的には「胴間声」と呼ばれる不快な感じの音になってしまいます。
ただし、経験上から言ってもこれ以外の帯域にはほとんど問題がない素晴らしい特性だとも言えます。
心配した高域も10kHz程度まで伸びており、通常の音楽再生では全く問題のないレンジが確保できています。
測定結果を元に部屋の影響で生じた周波数特性の乱れなどをルーム補正機能で修正します。
10個のパラメトリックEQ(イコライザー)で可能な限りフラットな特性となるよう調整するのが基本です。
逆にこのルームEQを操作することによって、どの周波数をどの程度の幅でどの程度上下するとどのような音色になるのかをリアルタイムで再現して体感することができます。
リスニングポイントでの周波数特性のゆがみと音色の関係を日頃から体験しておくことは、より良い音を目指すための極めて重要なポイントだと考えます。
このルーム補正についてはYA氏との何度かの出会いの中で私が感じた経験則を元に設定してみました。
それは、
・窓を開けられるような環境下ではご近所に迷惑を掛けない程度の音量で音楽を楽しむ(特に夏場は要注意)
・窓を締め切る冬場などでは「AVシアターとしてのスクリーンサウンド」を含めて大音量で楽しむ
今回はこの二つの要求を同時に満たせる再生特性を目指しました。
結論としては、完全なフラット化ではなくあえて低域と高域を若干(2~3dB)強調した特性にしてみました。
これによって夏場に小音量で聴くための充実した低域と繊細感を確保しつつ、冬の時期に可能(笑)となる「トップガン」などの映画を大迫力で楽しめる条件を両立したいと考えました。
最終的な評価は四季を経ないと判りませんが、頂いた感想文からはとりあえず大きな齟齬はないようなのでホッとしています。
とのお話は私の長年の不安(笑)を吹き飛ばしてくれるものでもあります。
今回のDEQX調整ではYA氏による「医学的な面からの後方支援」がなければ脱水による熱中症で今頃は・・・
内緒ですがYA氏は医学的な面ではプロ中のプロの方です。そんな方に私の水筒の氷まで面倒を見て頂き、本当にありがとうございました。
無事に調整を終えることができホッとすると同時に、もう少しだけ長生きしたいなと思いました。
文責:クリズラボ・栗原
■ DEQX設定を終えて
DEQX調整本番の日に備えて道順の確認とシステムの下見に伺いました。
お部屋に入った途端、男子あこがれの隠れ家にオーディオのおもちゃ箱をひっくり返したような素敵なシステムが・・・
多くの方の再生装置とオーディオルームを拝見してきましたが、ここまで「遊び心満載のオーディオ」を堪能されている方にお目にかかったのは初めてでした。
その二日後、DEQXの設定日を迎えました。
避暑地とは思えない猛暑の中、更に周囲の環境を破壊するDEQXの調整音(笑)が漏れないようにと閉め切った室内は体脂肪の燃焼には最適な空間でした。
早速、現状のシステムを測定。
まずは低域のD130と中域の2446のレベルバランスがドンピシャリ。「ムム、お主やるな(笑)」というのが正直な感想でした。(下図参照)
[ サブウーファーを除いた2Way(3ユニット)の再生周波数特性 ]
ただし、2446Jの高域を補完する075にはもう少し頑張って欲しい感じです。
YA氏の提案で075をFostex製のツィーターに変更したところ10kHz以上が僅かに改善されますが(下図)、五十歩百歩なのでJBLのユニットで統一することで意見が一致しました。
[ ツィーターをJBLからFostexに変更した場合の再生特性 ]
測定結果から導かれたインパルス応答は下図のようになりました。
3個のユニットは設置された状態通りに素直に応答していますが、これらの他に時間的にかなり接近した位置に強めの反射音が確認出来ます。
DEQXの補正処理における原則に従えば2446Jが立ち下がった直後に反射音と分離する線(グリーン)を置くことになりますが、これだと補正に必要なユニットの直接音成分がなくなってしまいます。
室内の反射音対策は当面無理なので今回はやや変則的ですが初期反射音込みの特性でスピーカー補正を実施することにします。
[ スピーカーシステム(サブウーファを除く)のインパルス応答特性 ]
その結果が下図で、ユニットの直接音と壁の反射を含んだ特性となります。
フルレンジユニットとして開発されたD130は38㎝という大口径にもかかわらず高域が5kHzまで伸びている(-10dB)のが判ります。
しかし、ボーカルなどの質感を考えるとクロスオーバーは出来るだけ低くしたいので2446Jが完全に立ち上がる600Hzとしました。
[ 部屋の反射を一部取り込んだ特性にクロスオーバーを設定 ]
ちなみにDEQXのスピーカー補正がない場合と比較できるようにクロスオーバーのみの設定も設けました。(下図)
[ サブウーファを含めて設定したクロスオーバー特性(DEQX補正なし) ]
次にサブウーファーを含めた総合的なクロスオーバーを組み込みます。
サブウーファーにもDEQXによる補正は可能ですがYST-SW1000の特性を信じて今回はスピーカー補正なしで使う事にしました。
ただ、SW1000はローパスフィルターが24dB/oct.のアナログ式なので、ここはDEQXのリニアフェイズフィルターで急峻にカットしてD130+平面バッフルの特徴を最大限に活かす工夫をしました。(下図)
[ サブウーファを含めて設定したDEQX補正後のクロスオーバー特性 ]
スピーカーの測定データーを元にユニットの補正フィルターとクロスオーバーを決定し、完成したデーターをDEQXに送り込むとスピーカーの設定が完了です。
[ メインの再生機器と200Vからステップダウンする電源システム ]
次は補正が完了したスピーカーで測定信号を再生し、リスニングポジションに於ける伝達周波数特性を測定します。
下の図はSP補正のみでルーム補正を行う前の結果です。
D130と2446Jが受け持つ帯域についてはDEQXのスピーカー補正によって150Hzから10kHz程度まではほぼフラットに再生されているはずです。
ところが聴取位置では300Hz付近に6dBを超える大きなピークが生じています。
再生するスピーカーに存在しないピークが受音点(聴取位置)で生じていますのでこれは部屋の影響と考えられます。
この300Hz付近は再生音に特徴的な影響がある帯域で、大きなピークがあると一般的には「胴間声」と呼ばれる不快な感じの音になってしまいます。
ただし、経験上から言ってもこれ以外の帯域にはほとんど問題がない素晴らしい特性だとも言えます。
心配した高域も10kHz程度まで伸びており、通常の音楽再生では全く問題のないレンジが確保できています。
[ 部屋の定在波などの影響を受けている状態での再生周波数特性 ]
測定結果を元に部屋の影響で生じた周波数特性の乱れなどをルーム補正機能で修正します。
10個のパラメトリックEQ(イコライザー)で可能な限りフラットな特性となるよう調整するのが基本です。
逆にこのルームEQを操作することによって、どの周波数をどの程度の幅でどの程度上下するとどのような音色になるのかをリアルタイムで再現して体感することができます。
リスニングポイントでの周波数特性のゆがみと音色の関係を日頃から体験しておくことは、より良い音を目指すための極めて重要なポイントだと考えます。
このルーム補正についてはYA氏との何度かの出会いの中で私が感じた経験則を元に設定してみました。
それは、
・窓を開けられるような環境下ではご近所に迷惑を掛けない程度の音量で音楽を楽しむ(特に夏場は要注意)
・窓を締め切る冬場などでは「AVシアターとしてのスクリーンサウンド」を含めて大音量で楽しむ
今回はこの二つの要求を同時に満たせる再生特性を目指しました。
[ 定在波の影響などをDEQXで補正した後の再生周波数特性 ]
結論としては、完全なフラット化ではなくあえて低域と高域を若干(2~3dB)強調した特性にしてみました。
これによって夏場に小音量で聴くための充実した低域と繊細感を確保しつつ、冬の時期に可能(笑)となる「トップガン」などの映画を大迫力で楽しめる条件を両立したいと考えました。
最終的な評価は四季を経ないと判りませんが、頂いた感想文からはとりあえず大きな齟齬はないようなのでホッとしています。
「DEQXの導入によってオーディオが終わるのではないかと薄々恐れを感じていましたが、その劇的な効果を目の当たりにすると終わるどころか更なる挑戦へ向けて闘志をかきたてられています。」
とのお話は私の長年の不安(笑)を吹き飛ばしてくれるものでもあります。
今回のDEQX調整ではYA氏による「医学的な面からの後方支援」がなければ脱水による熱中症で今頃は・・・
内緒ですがYA氏は医学的な面ではプロ中のプロの方です。そんな方に私の水筒の氷まで面倒を見て頂き、本当にありがとうございました。
無事に調整を終えることができホッとすると同時に、もう少しだけ長生きしたいなと思いました。
文責:クリズラボ・栗原