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User's Report
No. ユーザー DEQXの導入機種とシステムの特長 掲載時期
122 東京都 TS氏 HDP-4 / No.102登場のTS氏が新居にオーディオルームを建設 2022年2月
[ 防音構造の12畳に設置されたシステムで1950年代からのJAZZを堪能されるTS氏 ]


[ JBL 4367WXをバイアンプ駆動で使ったシンプルイズベストなシステム ]


[ 勘所を押さえた再生機器群:音源は99%がCD再生とのこと ]

■ 感 想 文

DEQXが我が家に入ったのは4年前、この時に調整もして貰いました。
(User's Report No.102)

その後、定年退職を機に出身地に家を建てて昨年末に引っ越しました。

新しいオーディオルームにシステムを仮設し、一ヶ月ほど音楽を聴いていました。

この状態では少しボリュームを上げると低音が意味もなく強調され、うるさく感じる状況が続いていました。

もちろん、部屋が変わりシステムも変更したことから改めて調整をお願いしていたのですが、家の状況が一段落したこともあり1月末に実施して頂きました。

今日の再調整で判ったのは部屋の影響で発生するという60Hz付近の定在波によって特定の低音成分が強調されていたのが原因との診断でした。

その他にもいくつかの部屋固有の問題と合わせて総合的なルームチューニングをして貰った結果、嘘のように聞きやすくなりました。

さらに私が好んで聴くジャンルに合わせて「50年代JAZZモード」を設定してもらいました。

サキソフォンコロッサスをかけるとこれでもかと前に飛び出すロリンズのサックスとともに厚みのある”カシーン”というシンバルの金属音にすっかりにやけてしまいました。

さらにHDP-4の出力にパッシブアッテネーターを追加すればD/Aコンバータをフル稼働させることができ、今よりはるかに鮮度が上がるとの営業(笑)を受け、たいへん興味を持ちました。

今日はとても楽しく、また、とても有意義な時間でした。

オミクロン株流行の中、現地までお越し頂いての調整、ありがとうございました。

東京都 TS

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■ データー紹介(Kurizz-Labo)

・ 今回、4年前と同一のスピーカーを測定することが出来ました。これによって設置された室内環境の違いを見ることが出来る貴重な機会となりました。

・ 一般的な居住空間でのスピーカー測定では基本的に無理な条件を背負っています。それは室内で生じるあらゆる反射音と定在波の影響です。

・ 経験則で言えばそれらの影響は概ね300Hz以下に現れるため、逆に言えばこの帯域のデーターが部屋の音響特性を表していることにもなります。

・ 下記の2枚はTS氏の新/旧の部屋での測定結果。そして3枚目は最近オーディオルームが完成してDEQX調整が進行中のKT氏(近日レポート予定)のもので、こちらも同じJBLの4367です。

[図1]今回の目的である新居に於けるスピーカー測定の結果

・ 部屋の影響を受ける300Hz以下に注目すると、L側の63Hz付近とR側の95Hz付近に10dBを越えるピークが現れています。

[図2]転居前のお部屋で測定した同一スピーカーの測定結果

・ こちらは以前のお部屋のもので、今回現れたピークがこちらにはありません。

・ 思い起こせば、従来のお部屋は他の居住スペースと共用の広い空間があり、全体として不定形な構造が定在波の発生を防いでいたと考えられます。

・ 同じスピーカーを同じ条件で測定しているので違いはスピーカーの周囲の空間にあると考えるのが自然です。

[図3]KT氏が新設されたオーディオルームで測定したJBL 4367の周波数特性

・ こちらは全く別のTK氏のデーターですが、特徴的なのは低域を含めてL/Rの特性が完全に一致していることです。これは均質で左右対称な空間にスピーカーが壁から等距離で設置されていることを示しています。

・ 低域には部屋の影響と思われる48Hzの小さなピークと100Hz付近にやや大きなディップが見えますが全帯域を通じて見事な音圧バランスが達成されています。

・ 改めて[図1]を見るとこちらは150Hz以下でL/Rに特性の違いあります。

・ 次の図は事前にTS氏から提供された室内の見取り図で、部屋に対してスピーカーが右寄りの配置となっていることが判ります。


< 防音対策済みのオーディオルーム(約12畳)を確保されたTS氏 >

・ 一般的にはこうした設置状況が多いかもしれませんが、こうした場合に生じる低域の左右差は実際にはあまり問題になることはありません。

・ 人間の耳は低域になるほど定位感(音源の方向)が薄れ、120Hz以下になると「音はすれども姿は見えず」状態になります。

・ 測定結果に多少の左右差があっても全体としての音響エネルギーがフラットであれば音楽再生畳上での問題はありません。

・ さて、次の二つのグラフはスピーカーの測定結果からインパルス応答を導き出したものですが、同じスピーカーでありながら興味深い違い生じています。

[図4]TS氏が使用中のJBL 4367のインパルス応答波形

・ TS氏のものはL/Cネットワークが入ったオリジナル状態の4367です。

・ この使い方はマルチアンプ方式の一つで、「L/Cネットワークを経由するマルチアンプ方式」 となります。
※ 詳しくはクリズラボの「オーディオ百科事典(Kurizzpedia)」をご覧下さい

既製品のマルチウェイスピーカーシステムからL/Cネットワークを取り去るか
バイパスをするなどの行為は故障の発生や保証の消滅、下取価格の下落など、
様々な問題を惹起する可能性がありますのでご注意下さい。

[図5]KT氏が使用中のJBL 4367

・ そしてこちらはL/Cネットワークをバイパスしてパワーアンプとユニットが直結された状態で、純粋なマルチアンプシステムとなっています。

・ ウーファーの特性を比較するとL/Cネットワークの有無が一目瞭然で、経由する「図1」では500Hzから上がネットワークによってカットされています。

・ これに対して「図3」では3kHzまで高域が伸びており、これが4367システムに使用されている38pウーファー(2216ND)そのものの特性となります。

・ この違いは「図4」と「図5」のインパルス応答のカーブ(ウーファー:黒線)に忠実に現れています。

・「図4」ではサインウェーブのような特性ですが、「図5」は細かな振幅として捕らえられています。

・ この違いはもちろんL/Cネットワークのフィルターが原因ですが、アンプの内部抵抗によるユニットの制動効果の違いもあることが推定されます。ネットワークのコイルには抵抗成分があり、これがアンプの制動力を低下させることは確かです。

・ 今回のDEQX調整では、全く同じスピーカーシステムでL/Cネットワークの有無が比較できる貴重な機会となりました。

・ クリズラボでは低音の正確な再現には反応の良いユニットを大型の密閉箱に入れる方式を推奨しています。
※ 詳しくはクリズラボの「KZ式スピーカーシステムのご提案」をご覧下さい
・ バスレフ型の既製品でも、L/Cネットワークをバイパスし、バスレフポートをダンプすることで低域のレスポンスを改善することは可能です。

・ ただし、バスレフの効果を補充するためのレベル補正や部屋の定在波対策等が重要な課題となってきます。

・ 最後に、今回の「お薦め標準モード」であるP1の特性を掲載しておきます。

[図6]リスニング用のソファー中央で測定した総合周波数特性

文責:クリズラボ・栗原

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