Beyond the Horn Unit
~ホーンユニットの彼方に~
3.システムとDEQX
2024-08-V1.0
[ 最新のデモ用システム:ONマウスで38㎝ユニットが追加されます ]
■ Alpair 11MSの実力とマルチ化の意味
Alpair 11MS を利用したシステム構築にあたり最初にユニットの実力を調査します。
初めにこのユニットの低音域について見てみます。
ロクハン(6.5インチ)ユニットは外径が約16.5㎝程度で振動板はエッジ部分を除いた寸法での面積となります。
多くのロクハンはエッジ部の長さ(幅)が1.5㎝程度なので振動板の直径は15㎝程度になります。それに対して Alpair 11MS はその名の通り直径11㎝の振動板となっています。
上の写真は手持ちのロクハンユニットを比較したものですが、Alpair 11MS の振動板は他に比べて半分程度しかありません。
これは最大の特徴となっているエッジのみでボイスコイルを支えるための工夫と面積が必要だったことを物語っています。
振動板の面積が半分ということは他のユニットと同じ音圧を得るためには2倍のストロークが必要で、Alpair 11MS のエッジにはこのための「しなやかさ」と、ボイスコイルの位置を正確に保つための強靱さを併せ持つ必要があります。
このようにロクハンユニットとしての性能を向上させながらダンパーを省くための努力(技術力)がいかに大変か、現物から直感的に伝わってきます。
結果的には大きなストローク(±8㎜)が確保され、低域の音圧に対する心配は希有であったことが判ります。
例えば、30~60Hz付近の超低域に巨大な再生エネルギーを必要とする曲 ※をイメージ通りに難なく再生したのにはビックリしました。
※ The Eagles - Hotel California(Hell Freezes Over Live 1994)
スタジオに観客を入れて録音されたこのアルバムの6曲目(Hotel California)の33秒付近から奏でられるコンガの凄まじい低音がどのように再現されるかはオーディオマニアには外せないチェックポイントでしょう。
ところでこの低音ですが、コンガの音をそのまま録音しても絶対にこの音にはなりません。ここはレコーディングエンジニアの本領発揮で、特殊なマイクアレンジや極端なイコライジングが実施されていることは明らかです。
このようなチャレンジングなこの曲は「良い曲、良い演奏、良い(面白い)録音」の三拍子が揃ったオーディオファン向けの名曲であることは間違いありません。
そして、この一曲からも Alpair 11MS+KL製BOXによる低域がただ者ではないことが確認出来ました。
ただし、パイプオルガンの最低音に近い「C1」鍵盤の32.7Hzが盛大に演奏される曲 ※をあるレベル以上の音量で再生する場合では38㎝ウーファーの威力が明確に示されることになります。
※ The Tyn Church Organ(Prague 1673:Peter van Dijk)
32Hzは「音」として聞こえるぎりぎりの低音ですが再生レベルを上げると空気の振動を通じて部屋の床や天井が振動するのがはっきりと体感できます。
この床を振動させるまでの音圧は Alpair 11MS では能力を超えてしまうのは明かです。実際のパイプオルガンで感じるような身体で聴く低音まで求めるなら38㎝ウーファーが必要です。
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次に高域ですが、このAlpair 11MSはフルレンジユニットとして成り立たせるめの味付けが巧妙に施されていることが判ります。
上のグラフのように軸上から15°(緑色)方向の特性を見ると全体として見事な「かまぼこ型」となっています。これはフルレンジユニットとしての典型的な帯域バランスと言えるものです。
0°(軸上:青線)の特性を見ると高域に大きなピークが二つあります。18kHzは振動板の共振と思われますがこれは20kHzに近い超高域でもあり、聴感上への影響はほぼ無視できると思います。
もう一つの8kHz付近にあるやや幅の広いピークですが、ここは声や楽器の倍音成分が多く存在する帯域になります。良質な音源であれば弦楽器などの美しい倍音の響きが強調され、心地よく響いてくる効果があります。
ただし、最近耳にすることが多くなってきた極端なイコライジング処理による「高域強調型ボーカル」は透明感の演出には効果的なのですが8kHz付近にピークを持つ再生装置では二重に強調されてしまい、刺激的な音になる危険性があります。
つまり、Alpair 11MS はフルレンジらしい特長を備えた上で弦などの美しい響きが加わった音を奏でてくれる一方で、不得意な音源も存在するという・・・なかなかの「クセ」モノと言えそうです。
クリズラボは一切の色付け(クセ)を廃した「無色透明な再生音」を目指しますが、フルレンジ一発で奏でられる独特の音の世界に魅せられるのは「P-610」で育った世代の甘え(特徴)でしょうか。
そして、この甘えを排除するのがツィーターの役割です。クリズラボでは既に導入済みの beymaのTPL-200 が Alpair 11MS のクセを排除して高忠実度再生実現へのキーデバイスとなります。
上の実測特性からも判りますように3kHz以上における 0°と15° の特性では20kHzまでが完全に一致していることた判ります。Alpair 11MSの特性と比べればその差は歴然です。
Alpair 11MS の高域をTPL-200に受け持たせることでクセとなるピークもなくなり、再生装置としての圧倒的な精度で音源を忠実に再生してくれるようになります。
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次の中音域ですが、この帯域は今回の目的であるホーンユニットの置き換えに成功するかどうかの決定的な要素となります。
ここで、音楽(音域)の周波数的な特長とマルチアンプシステムの各再生帯域の関係を見てみましょう。
※資料(音楽の再生装置で音域を 3 つに分ける場合の帯域と分割周波数:PDF)をご覧下さい。
この資料は再生装置に一切の制約がない場合を想定したものですが、実際には使用するスピーカーユニットの性能などから妥協せざるを得ない部分が生じてきます。
例えばクリズラボの従来システムではミッドレンジ用ホーンユニットの制約から低域側のクロスオーバーが350Hz以下にはできませんでした。
再生する音(音楽)のなかで微妙な違いが最も判りやすいのは人の声で、楽器ではピアノなどでしょうか。日本人であれば三味線や琴、尺八なども違いや好みが判りやすい音源だと思います。
この中で再生頻度の最も高いのが人の声(ボーカル)だと思います。例えばバリトン(男性)の歌手なら110Hz以上、アルト(女性)では175Hz以上の基本的な周波数成分があります。
この歌手の声をウーファーユニットで再生するかMidレンジユニットで再生するかは音質上の重要なポイントとなります。
例えば振動板にかなりの質量が必要な38㎝のウーファーユニットで人の声を再生すると、軽量な振動板で再生された声に比べて「鈍重な響き」を伴った声に感じるのは私だけではないと思います。
実際にDEQXでクロスオーバー周波数を変えながら聴いてみるとウーファーの受持つ帯域によってボーカルの質感が決定的に異なることが良く判ります。
このことからウーファーの再生帯域を決定する低域側のクロスオーバーはできるだけ下げることが良質な声の再生には大切な条件となります。
今回採用した Alpair 11MS は測定データーや試聴結果からも低域側のクロスオーバーは50Hz以上で自由に設定することが可能で、理想に大きく近づけることができます。
下図は3Way再生時の最終的なシステム構成とクロスオーバーフィルターですが、各ユニットの受持帯域が音楽成分的にも理想的に分割できました。
課題だった「ボーカル」も基本的な周波数成分は全て Alpair 11MS の受持範囲となりウーファー再生による重苦しさから完全に解放されます。
このようにMidレンジに Alpair 11MS を使う事でボーカルの質感などでは圧倒的に有利な条件となります。しかし、長年システムのミッドレンジを担ってきたホーンユニットから本当に決別できるのか、最終的にはヒアリングでの判定となります。
この点に集中して試聴を繰り返した結果、当然ではありますが ホーン特有のクセが一切なくなり、音楽成分全体を極めて透明度の高い音で再現出来ることが判りました。
いかにも「美音」が響くのではという見た目のスタイルを含め、長期に亘ってシステムを支えてくれたホーンシステムとはこれで決別する事になりました。
初めにこのユニットの低音域について見てみます。
ロクハン(6.5インチ)ユニットは外径が約16.5㎝程度で振動板はエッジ部分を除いた寸法での面積となります。
多くのロクハンはエッジ部の長さ(幅)が1.5㎝程度なので振動板の直径は15㎝程度になります。それに対して Alpair 11MS はその名の通り直径11㎝の振動板となっています。
[ ロクハンユニットの比較(黄色=共通サイズ、緑色=各ユニットの振動板 ]
上の写真は手持ちのロクハンユニットを比較したものですが、Alpair 11MS の振動板は他に比べて半分程度しかありません。
これは最大の特徴となっているエッジのみでボイスコイルを支えるための工夫と面積が必要だったことを物語っています。
振動板の面積が半分ということは他のユニットと同じ音圧を得るためには2倍のストロークが必要で、Alpair 11MS のエッジにはこのための「しなやかさ」と、ボイスコイルの位置を正確に保つための強靱さを併せ持つ必要があります。
このようにロクハンユニットとしての性能を向上させながらダンパーを省くための努力(技術力)がいかに大変か、現物から直感的に伝わってきます。
結果的には大きなストローク(±8㎜)が確保され、低域の音圧に対する心配は希有であったことが判ります。
例えば、30~60Hz付近の超低域に巨大な再生エネルギーを必要とする曲 ※をイメージ通りに難なく再生したのにはビックリしました。
※ The Eagles - Hotel California(Hell Freezes Over Live 1994)
スタジオに観客を入れて録音されたこのアルバムの6曲目(Hotel California)の33秒付近から奏でられるコンガの凄まじい低音がどのように再現されるかはオーディオマニアには外せないチェックポイントでしょう。
ところでこの低音ですが、コンガの音をそのまま録音しても絶対にこの音にはなりません。ここはレコーディングエンジニアの本領発揮で、特殊なマイクアレンジや極端なイコライジングが実施されていることは明らかです。
このようなチャレンジングなこの曲は「良い曲、良い演奏、良い(面白い)録音」の三拍子が揃ったオーディオファン向けの名曲であることは間違いありません。
そして、この一曲からも Alpair 11MS+KL製BOXによる低域がただ者ではないことが確認出来ました。
ただし、パイプオルガンの最低音に近い「C1」鍵盤の32.7Hzが盛大に演奏される曲 ※をあるレベル以上の音量で再生する場合では38㎝ウーファーの威力が明確に示されることになります。
※ The Tyn Church Organ(Prague 1673:Peter van Dijk)
32Hzは「音」として聞こえるぎりぎりの低音ですが再生レベルを上げると空気の振動を通じて部屋の床や天井が振動するのがはっきりと体感できます。
この床を振動させるまでの音圧は Alpair 11MS では能力を超えてしまうのは明かです。実際のパイプオルガンで感じるような身体で聴く低音まで求めるなら38㎝ウーファーが必要です。
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次に高域ですが、このAlpair 11MSはフルレンジユニットとして成り立たせるめの味付けが巧妙に施されていることが判ります。
[ 指向周波数特性の測定結果 ]
上のグラフのように軸上から15°(緑色)方向の特性を見ると全体として見事な「かまぼこ型」となっています。これはフルレンジユニットとしての典型的な帯域バランスと言えるものです。
0°(軸上:青線)の特性を見ると高域に大きなピークが二つあります。18kHzは振動板の共振と思われますがこれは20kHzに近い超高域でもあり、聴感上への影響はほぼ無視できると思います。
もう一つの8kHz付近にあるやや幅の広いピークですが、ここは声や楽器の倍音成分が多く存在する帯域になります。良質な音源であれば弦楽器などの美しい倍音の響きが強調され、心地よく響いてくる効果があります。
ただし、最近耳にすることが多くなってきた極端なイコライジング処理による「高域強調型ボーカル」は透明感の演出には効果的なのですが8kHz付近にピークを持つ再生装置では二重に強調されてしまい、刺激的な音になる危険性があります。
つまり、Alpair 11MS はフルレンジらしい特長を備えた上で弦などの美しい響きが加わった音を奏でてくれる一方で、不得意な音源も存在するという・・・なかなかの「クセ」モノと言えそうです。
クリズラボは一切の色付け(クセ)を廃した「無色透明な再生音」を目指しますが、フルレンジ一発で奏でられる独特の音の世界に魅せられるのは「P-610」で育った世代の甘え(特徴)でしょうか。
そして、この甘えを排除するのがツィーターの役割です。クリズラボでは既に導入済みの beymaのTPL-200 が Alpair 11MS のクセを排除して高忠実度再生実現へのキーデバイスとなります。
[ TPL-200:指向周波数特性の測定結果 ]
上の実測特性からも判りますように3kHz以上における 0°と15° の特性では20kHzまでが完全に一致していることた判ります。Alpair 11MSの特性と比べればその差は歴然です。
Alpair 11MS の高域をTPL-200に受け持たせることでクセとなるピークもなくなり、再生装置としての圧倒的な精度で音源を忠実に再生してくれるようになります。
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次の中音域ですが、この帯域は今回の目的であるホーンユニットの置き換えに成功するかどうかの決定的な要素となります。
ここで、音楽(音域)の周波数的な特長とマルチアンプシステムの各再生帯域の関係を見てみましょう。
※資料(音楽の再生装置で音域を 3 つに分ける場合の帯域と分割周波数:PDF)をご覧下さい。
この資料は再生装置に一切の制約がない場合を想定したものですが、実際には使用するスピーカーユニットの性能などから妥協せざるを得ない部分が生じてきます。
例えばクリズラボの従来システムではミッドレンジ用ホーンユニットの制約から低域側のクロスオーバーが350Hz以下にはできませんでした。
再生する音(音楽)のなかで微妙な違いが最も判りやすいのは人の声で、楽器ではピアノなどでしょうか。日本人であれば三味線や琴、尺八なども違いや好みが判りやすい音源だと思います。
この中で再生頻度の最も高いのが人の声(ボーカル)だと思います。例えばバリトン(男性)の歌手なら110Hz以上、アルト(女性)では175Hz以上の基本的な周波数成分があります。
この歌手の声をウーファーユニットで再生するかMidレンジユニットで再生するかは音質上の重要なポイントとなります。
例えば振動板にかなりの質量が必要な38㎝のウーファーユニットで人の声を再生すると、軽量な振動板で再生された声に比べて「鈍重な響き」を伴った声に感じるのは私だけではないと思います。
実際にDEQXでクロスオーバー周波数を変えながら聴いてみるとウーファーの受持つ帯域によってボーカルの質感が決定的に異なることが良く判ります。
このことからウーファーの再生帯域を決定する低域側のクロスオーバーはできるだけ下げることが良質な声の再生には大切な条件となります。
今回採用した Alpair 11MS は測定データーや試聴結果からも低域側のクロスオーバーは50Hz以上で自由に設定することが可能で、理想に大きく近づけることができます。
下図は3Way再生時の最終的なシステム構成とクロスオーバーフィルターですが、各ユニットの受持帯域が音楽成分的にも理想的に分割できました。
[ 3Wayシステムにおける帯域分割とスピーカーの関係 ]
課題だった「ボーカル」も基本的な周波数成分は全て Alpair 11MS の受持範囲となりウーファー再生による重苦しさから完全に解放されます。
このようにMidレンジに Alpair 11MS を使う事でボーカルの質感などでは圧倒的に有利な条件となります。しかし、長年システムのミッドレンジを担ってきたホーンユニットから本当に決別できるのか、最終的にはヒアリングでの判定となります。
この点に集中して試聴を繰り返した結果、当然ではありますが ホーン特有のクセが一切なくなり、音楽成分全体を極めて透明度の高い音で再現出来ることが判りました。
いかにも「美音」が響くのではという見た目のスタイルを含め、長期に亘ってシステムを支えてくれたホーンシステムとはこれで決別する事になりました。
■ デモ用システムの具体例
[ フルレンジユニットを中心に3種類の構成が可能なSPシステム ]
クリズラボのデモ用システムでもあることからお客様の要望に添った試聴ができるように設計しました。
原理的には上の図のようにDEQX内部の設定データーを入れ替えることで魅惑のフルレンジ一発から手頃な価格での2Wayによるハイエンド再生、そして音圧の壁を取り払う究極の3Wayまでが試聴できるシステムを目指します。
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ここでDEQXとシステム構成の最も基本的な関係についておさらいをしておきます。
DEQXはアンプとスピーカーによる再生系統を指定することが設定の第一歩となります。
基本はマルチアンプ方式に何台のパワーアンプ(Lo/Mid/Highなどの各帯域専用アンプの台数)を使うかでシステム構成が決まり、それに沿って6個の出力端子(L1/L2/L3とR1/R2/R3)の接続先が決定されます。
例えば1台のアンプを使用する「Single-amp」設定では「L2/R2」の出力端子にフルレンジの信号が出て(上図の一番上)他の端子は無信号となります。
同様に2台の「Bi-amp」と3台の「Tri-amp」ではそれぞれのシステム構成に対応します。
また、サブウーファーを組み合わせた場合 ※は次の4通りから設定します。
※ メインとなる1Way(フルレンジ)または、2Wayシステムにサブウーファーをプラスするシステムの場合
1.Single-amp with optional mono subwoofers(出力=L1/L2、R2)
2.Single-amp with optional stereo subwoofers(出力=L1/L2、R1/R2)
3.Bi-amp with optional mono subwoofers(出力=L1/L2/L3、R2/R3)
4.Bi-amp with optional stereo subwoofers(出力=L1/L2/L3、R1/R2/R3)
システム構成が決まると次は Profile(プロファイル)という機能を使ってユニット間のクロスオーバー特性を変えたり、好みの音色を持たせるなどの基本的な要素について4つまで設定でき、ボタン一つで切り替えることができます。
以上がDEQXのプロファイルに関する設定要素ですが、これらを踏まえた上で今回は特殊な方法で上の図の3つの構成をプロファイルで切り替える方法を採用しました。
この方法は実現可能な条件と、ある種の制約を伴う方法であるため一般的にはお奨めできませんが何かの参考になればと思います。
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■ デモシステムでの設定例(下の選択肢で再生方式が確認できます)
Profile:P1 | 1Way(Alpair 11MS Full Range-System) |
---|---|
Profile:P2 | 2Way(Alpair 11MS+Tweeter) |
Profile:P3 | 3Way(Alpair 11MS+Tweeter+Woofer) |
このシステムに於ける特殊な条件の一つはKL製BOXに収めたAlpair 11MSが38㎝ウーファーと同じ30Hzまでの再生が可能なことです。
この状態で通常の3Way設定も可能ですが、38㎝ユニットをサブウーファーシステムとして取り扱うこともできます。
そこで、前述したサブウーファ設定の4番目(Bi-amp with optional stereo subwoofers)として定義することでシステムの状態(コンフィグレーション)を変更せずにプロファイルのみの切替で3つの再生方法が実現できます。
ウーファーとサブウーファーのクロスは80~120Hz程度が推奨範囲ですが、今回は両者の帯域が完全に重なっているのでどこでもクロスすることができます。
そこで、Alpair 11MSの低域に於ける耐入力特性を勘案して100Hzでクロスしました。
もう一つの「制約」はフルレンジ再生時の高域がDEQXのクロスオーバーフィルターの上限から20kHzまでとなる事です。
ちなみに、下の図はAlpair 11MS+KL-BOXの実測値で、再生帯域は30Hz~22kHzというワイドレンジな特性となっています。
[ Alpair 11MS フルレンジユニットの実力 ]
このAlpair 11MSの高域特性のうち図のように20kHz以上がDEQXのフィルターでカットされますが、元々20kHz以上が存在しないCD音源での影響はほぼゼロだと思われます。
可聴帯域外の高域まで存在するという一部の高音質録音の音源でもDEQXのフィルターによる影響に気付く方は極めて少ないと思われますが、気になる方にはお奨めできない方式となります。
以上はクリズラボのデモシステムに採用した特殊な設定例で、通常3つの再生方式を切り替えながら音楽を聴くことは考えられませんが興味のある方は参考にして下さい。
■ DEQXによる調整結果と試聴
DEQXはリスニングポジションでの再生周波数特性のフラット化と周波数に対する到着時間のズレをなくすことが重要な目的となります。
昔(今も?)「スピーカーの音質を周波数特性で語ることは意味がない」という風潮がありました。これは大きな間違いでフラットにできなかったための言い訳に過ぎません。
現在のオーディオブランドの中でも特にハイエンド製品をメインとする正統派のメーカーは原音に色付けをしない透明性(Transparency:トランスペアレンシー)を確保すること、つまり再生周波数特性のフラット化と良好な位相特性が得られることを最優先に開発が行われていることは嬉しい限りです。
再生側で一切の色付けをしないということは入力音源の情報がそのまま目の前に再現される性能を追求することですが、その結果が必ずしも全ての音源が美しく響くということではありません。
1980年代「美しい方はより美しく、そうでない方はそれなりに写ります。」が流行語になりました。
オーディオでも再生クオリティを極限まで向上させるとまさにこの通りになります。良質な音源はその美音を部屋に響かせますが、首をひねる再生音は音源がそれなりのものであることを証明してしまいます。
そんな中で、私が理想とする音源は「良い曲、良い演奏、良い録音」の三拍子が揃ったものですが、手元のCDの中で「良い録音」の条件まで満たしたくれるCD音源は5%程度でしょうか。
-----------------------------------------------
新システムに移行してまだ日が浅いため、改善の余地は大いに残していますが、現時点でのリスニングポイントに於ける周波数特性と試聴結果は以下の通りです。
1.Alpair 11MS によるフルレンジ(1Way)再生
なんと、2万円ほど(2024年8月現在)で手に入るユニットですが、適切なBOXに収納してDEQXで補正すると30Hz~20kHzのワイドレンジでフラットな再生が可能です。
正直言って、これ以上は何が必要かと思えるほどのクォリティで音楽を楽しむことができます。
ただし、ボーカルや弦楽器の倍音がもう少し軽く、もう少し緻密に出ててくれればとも思いますが、それをフルレンジユニットに求めるのは欲張りすぎかもしれません。
-----------------------------
2.ツィーターをプラスした2Way再生
3kHz以上を AMT(エアモーショントランスファー)方式のTPL-200に受け持たせることで低域での大音量再生が必要な音源を除けばこれ以上は必要がないと思えるほどの透明度とクォリティで音楽を楽しむことが出来ます。
音源の情報を目の前の空間に正しく再現するという基本的な要件はこの2Wayシステムで完全に達成されたと言えます。
隣家から苦情が来ない程度の音量(笑)までならば大振幅となる低音域まで含めて破綻のない見事な再生音を聴かせてくれます。
----------------------------------------
3.38㎝ウーファーを加えた3Way再生
空気の振動を肌で、床から伝わる振動を身体で受け止めることで始めて判る音楽 ※もあります。
※ 鬼太鼓座 CD「富嶽百景 FUJIYAMA」
当時としては日本最大となる直径2.25m、重さ3トンの大太鼓が炸裂する凄まじいまでの迫力は実際に味わった人にしか判らないかもしれません。
2007年の8月、軽井沢の万平ホテルで開かれたオーディオサロンでレコ-ディングエンジニアの高田氏による録音秘話と共に、この曲を聴きました。
再生装置は GOLDMUNDのTELOS2500(モノラル、2.5kW出力)でドライブされる JBL のエベレスト DD66000 でした。
私の印象ではさすがの機材群でもあまりにも広いスペースのためか、再生音圧がユニットの限界を超えていたような印象がありました。
もちろんそのまま我が家で再現したら・・・・家が壊れていたかもしれません。
それが今では自宅で「直径2.25m、重さ3トンの大太鼓」が見事に炸裂します。
これは強力な38㎝ユニットと真鍮棒で補強した完全密閉箱で構成したウーファーをプラスした結果ですが、真にクォリティの高いサブ・ウーファー ※が手に入れば同様な感覚を味わえるかもしれません。
※ 例えば KEF社の製品など
------------------------
4.(参考)Alpair 11MS+KL製BOXをDEQXの補正なしで再生した場合
500Hz付近を中心に30Hz~20KHzまでが緩やかな「かまぼこ型」の特性となっていることが判ります。
カタログ値の-10dBを再生周波数範囲とすれば30Hz~20kHzとなり、ロクハンユニットとしては驚異的なワイドレンジ再生が可能です。
ただ、DEQXで補正した場合と比べると明らかに特有のクセが表面化してくるとともに、中低域が中心のレンジの狭い音に聞こえるのはやむを得ないことだと思います。
トーンコントロール(懐かしい響きですね)付きのアンプがあれば中低域を6~8dB絞るだけで家庭用の音楽鑑賞装置としは十分な性能を発揮できることは確実で、ダンパーレス型フルレンジユニットが醸し出す美しい音楽が手軽に楽しめると思います。
昔(今も?)「スピーカーの音質を周波数特性で語ることは意味がない」という風潮がありました。これは大きな間違いでフラットにできなかったための言い訳に過ぎません。
現在のオーディオブランドの中でも特にハイエンド製品をメインとする正統派のメーカーは原音に色付けをしない透明性(Transparency:トランスペアレンシー)を確保すること、つまり再生周波数特性のフラット化と良好な位相特性が得られることを最優先に開発が行われていることは嬉しい限りです。
再生側で一切の色付けをしないということは入力音源の情報がそのまま目の前に再現される性能を追求することですが、その結果が必ずしも全ての音源が美しく響くということではありません。
1980年代「美しい方はより美しく、そうでない方はそれなりに写ります。」が流行語になりました。
オーディオでも再生クオリティを極限まで向上させるとまさにこの通りになります。良質な音源はその美音を部屋に響かせますが、首をひねる再生音は音源がそれなりのものであることを証明してしまいます。
そんな中で、私が理想とする音源は「良い曲、良い演奏、良い録音」の三拍子が揃ったものですが、手元のCDの中で「良い録音」の条件まで満たしたくれるCD音源は5%程度でしょうか。
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新システムに移行してまだ日が浅いため、改善の余地は大いに残していますが、現時点でのリスニングポイントに於ける周波数特性と試聴結果は以下の通りです。
1.Alpair 11MS によるフルレンジ(1Way)再生
[ DEQXで補正した Alpair 11MS の再生周波数特性 ]
なんと、2万円ほど(2024年8月現在)で手に入るユニットですが、適切なBOXに収納してDEQXで補正すると30Hz~20kHzのワイドレンジでフラットな再生が可能です。
正直言って、これ以上は何が必要かと思えるほどのクォリティで音楽を楽しむことができます。
ただし、ボーカルや弦楽器の倍音がもう少し軽く、もう少し緻密に出ててくれればとも思いますが、それをフルレンジユニットに求めるのは欲張りすぎかもしれません。
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2.ツィーターをプラスした2Way再生
[ Alpair 11MS+TPL-200の2Way再生に於ける再生周波数特性 ]
3kHz以上を AMT(エアモーショントランスファー)方式のTPL-200に受け持たせることで低域での大音量再生が必要な音源を除けばこれ以上は必要がないと思えるほどの透明度とクォリティで音楽を楽しむことが出来ます。
音源の情報を目の前の空間に正しく再現するという基本的な要件はこの2Wayシステムで完全に達成されたと言えます。
隣家から苦情が来ない程度の音量(笑)までならば大振幅となる低音域まで含めて破綻のない見事な再生音を聴かせてくれます。
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3.38㎝ウーファーを加えた3Way再生
[ 3Way再生時の帯域別受持ユニットと再生周波数特性 ]
空気の振動を肌で、床から伝わる振動を身体で受け止めることで始めて判る音楽 ※もあります。
※ 鬼太鼓座 CD「富嶽百景 FUJIYAMA」
当時としては日本最大となる直径2.25m、重さ3トンの大太鼓が炸裂する凄まじいまでの迫力は実際に味わった人にしか判らないかもしれません。
2007年の8月、軽井沢の万平ホテルで開かれたオーディオサロンでレコ-ディングエンジニアの高田氏による録音秘話と共に、この曲を聴きました。
再生装置は GOLDMUNDのTELOS2500(モノラル、2.5kW出力)でドライブされる JBL のエベレスト DD66000 でした。
私の印象ではさすがの機材群でもあまりにも広いスペースのためか、再生音圧がユニットの限界を超えていたような印象がありました。
もちろんそのまま我が家で再現したら・・・・家が壊れていたかもしれません。
それが今では自宅で「直径2.25m、重さ3トンの大太鼓」が見事に炸裂します。
これは強力な38㎝ユニットと真鍮棒で補強した完全密閉箱で構成したウーファーをプラスした結果ですが、真にクォリティの高いサブ・ウーファー ※が手に入れば同様な感覚を味わえるかもしれません。
※ 例えば KEF社の製品など
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4.(参考)Alpair 11MS+KL製BOXをDEQXの補正なしで再生した場合
[ Alpair 11MS+KL製BOXでの再生周波数特性 ]
500Hz付近を中心に30Hz~20KHzまでが緩やかな「かまぼこ型」の特性となっていることが判ります。
カタログ値の-10dBを再生周波数範囲とすれば30Hz~20kHzとなり、ロクハンユニットとしては驚異的なワイドレンジ再生が可能です。
ただ、DEQXで補正した場合と比べると明らかに特有のクセが表面化してくるとともに、中低域が中心のレンジの狭い音に聞こえるのはやむを得ないことだと思います。
トーンコントロール(懐かしい響きですね)付きのアンプがあれば中低域を6~8dB絞るだけで家庭用の音楽鑑賞装置としは十分な性能を発揮できることは確実で、ダンパーレス型フルレンジユニットが醸し出す美しい音楽が手軽に楽しめると思います。
■ 新システムの〝初〟試聴レポート
クリズラボ新システムの試聴メモ
2024年8月14日
島村 宰治
◆ 全体の印象
オーディオは同時比較が難しいため、あいまいではありますが以前に増してよりHiFiに進化したと聴こえました。
以前のシステムは実在感、エネルギー感、浸透性など、思わず引き込まれる“聴かせる音”でした。
TADホーンの外観に似合わず繊細感や定位などもすばらしく、DEQXによる理想的なマルチアンプシステムの証左、との印象で、以前の試聴メモからも読み取ることができます。
一方、新システムは忠実度にフォーカスし、定位と繊細感をより高いレベルでまとめた印象です。
ボーカルやソロ楽器は生音により近づき、録音のくせやエフェクターの使い方さえも想像できるような非常に忠実度が高い再生音に驚きました。
聴いているうちに100~200Hzあたりのレスポンスをわずかに持ち上げたのかと思えましたが、フラットを謳ったソースではそんなことはなく、栗原氏のお話しでは最近の録音の傾向を意識した一曲かもしれないとのこと。
また、高域がきれいに録音されているソースは、きれいなだけでなく楽器の特徴やマイク位置まで想像できる情報を含んでいることが分かる。といった具合で、言い古された言葉ですが ”音が見える” を再認識いたしました。
この変更はさまざまな実験を経て、悩み、実行なさっただろうことが窺え、理想的なオーディオの楽しみ方の一つなのではと、羨ましく思えました。
◆ ミッドレンジユニットの入替
今回はTADホーンからマークオーディオのコーンスコーカへの切替えが最大の変化です。
初めてこのお話を伺ったときは失礼ながらグレードダウンにほかならない、栗原氏どうした。と思ったのが正直なところでした。
というのは、マークオーディオのユニットはイベントで何回か聴いたことがあり、昔のシングルコーンより優れているもののお手軽オーディオの範疇と思い込んでいました。
それが今回、マークオーディオ製ユニット+工夫を凝らしたキャビネット+DEQXによる音はとんでもないハイグレードな音であることにびっくり。
大音量を求めなければこれのみで広帯域マニアも十分満足できる音と聴きました。
条件がそろったときのマークオーディオの可能性を改めて認識いたしました。
◆ 「+」ツィータ
システムにツィータを加えると高域が広がるというより全帯域にわたって情報量が増すことを実感しました。
ボーカルは実在感が増し、チェンバロは弦を弾く瞬間が見える。楽器の数やコーラスの人数が分かるといった具合。
ツィータの有無が分からないソース、ツィータがない方が聴きやすいソースなどもある一方で、ツィータなしではいられないソースも多数ありました。
総じて優れた録音ほどツィータの必要性が高いと聴きました。
◆ 「+」38㎝ウーファー
残念ながら今回は時間の関係もありウーファーの効果については聴きそびれましたが、マークオーディオのユニットだけでは絶対無理と思われる体感型低音は以前と同じ迫力のはず、と一人納得してこの日の試聴を終えました。
今回もありがとうございました。
以上:島村 記
2024年8月14日
島村 宰治
◆ 全体の印象
オーディオは同時比較が難しいため、あいまいではありますが以前に増してよりHiFiに進化したと聴こえました。
以前のシステムは実在感、エネルギー感、浸透性など、思わず引き込まれる“聴かせる音”でした。
[ 2017年8月12日:以前のシステムを試聴中の島村氏 ]
TADホーンの外観に似合わず繊細感や定位などもすばらしく、DEQXによる理想的なマルチアンプシステムの証左、との印象で、以前の試聴メモからも読み取ることができます。
一方、新システムは忠実度にフォーカスし、定位と繊細感をより高いレベルでまとめた印象です。
[ 2024年8月14日:今回の新システムを試聴される島村氏 ]
ボーカルやソロ楽器は生音により近づき、録音のくせやエフェクターの使い方さえも想像できるような非常に忠実度が高い再生音に驚きました。
聴いているうちに100~200Hzあたりのレスポンスをわずかに持ち上げたのかと思えましたが、フラットを謳ったソースではそんなことはなく、栗原氏のお話しでは最近の録音の傾向を意識した一曲かもしれないとのこと。
また、高域がきれいに録音されているソースは、きれいなだけでなく楽器の特徴やマイク位置まで想像できる情報を含んでいることが分かる。といった具合で、言い古された言葉ですが ”音が見える” を再認識いたしました。
この変更はさまざまな実験を経て、悩み、実行なさっただろうことが窺え、理想的なオーディオの楽しみ方の一つなのではと、羨ましく思えました。
◆ ミッドレンジユニットの入替
今回はTADホーンからマークオーディオのコーンスコーカへの切替えが最大の変化です。
初めてこのお話を伺ったときは失礼ながらグレードダウンにほかならない、栗原氏どうした。と思ったのが正直なところでした。
というのは、マークオーディオのユニットはイベントで何回か聴いたことがあり、昔のシングルコーンより優れているもののお手軽オーディオの範疇と思い込んでいました。
それが今回、マークオーディオ製ユニット+工夫を凝らしたキャビネット+DEQXによる音はとんでもないハイグレードな音であることにびっくり。
大音量を求めなければこれのみで広帯域マニアも十分満足できる音と聴きました。
条件がそろったときのマークオーディオの可能性を改めて認識いたしました。
◆ 「+」ツィータ
システムにツィータを加えると高域が広がるというより全帯域にわたって情報量が増すことを実感しました。
ボーカルは実在感が増し、チェンバロは弦を弾く瞬間が見える。楽器の数やコーラスの人数が分かるといった具合。
ツィータの有無が分からないソース、ツィータがない方が聴きやすいソースなどもある一方で、ツィータなしではいられないソースも多数ありました。
総じて優れた録音ほどツィータの必要性が高いと聴きました。
◆ 「+」38㎝ウーファー
残念ながら今回は時間の関係もありウーファーの効果については聴きそびれましたが、マークオーディオのユニットだけでは絶対無理と思われる体感型低音は以前と同じ迫力のはず、と一人納得してこの日の試聴を終えました。
今回もありがとうございました。
以上:島村 記