スピーカに限って言えば、JBLほど長年にわたりプロオーディオ業界で成功を収めてきた企業はありません。
JBLで43年にわたり働き、最後はチーフエンジニアにまで上りつめ最近引退したGregは、世界中の最先端録音スタジオやマスタリングスタジオで使用されている彼が設計したスピーカの1つが、DEQX「HD-Active次世代スピーカ・アーキテクチャ(※)」でどのように生まれ変わるかを体験しました。
< Greg氏と彼の再生システム >
私のスピーカーシステムの15インチウーファはアルニコ磁石と1.5インチの磁気空隙のある1インチ長ボイスコイルで駆動しています。
コーンは表面を紙で覆った発泡性のコア材で、リニアな動作にたいへん優れ、超低歪性能を有しています。
高域のコンプレッションドライバには4インチのネオジウム磁石回路で駆動する4インチの純ベリリウム振動版を採用しています。この振動版の一次モード周波数は15kHzあたりです。
超高域ドライバは、高域ドライバを小さくしたもので、1インチの振動版を採用しています。
高域と超高域用のホーンは定指向性で周波数によらず指向性が均一です。
ウーファのエンクロージャは280リッターで積層の曲面ボードをMDFで固めて使用しています。エンクロージャは十分に補強されており、表面バッフルの形状はホーンの先端と同一面になっています。
ウーファ用の2個の低域用ドライバはあたかも1つのドライバとして動作するように結合され、カットオフ周波数180Hz/6dB/oct.のアナログ・クロスオーバーが採用されています。
このスピーカーに対して、DEQXのHDP-4は2個のウーファを1つの低域用ドライバとして処理します。
高域用のクロスオーバーを750Hz/48dB/oct.に設定し、超高域には12kHz/48dB/oct.のクロスオーバーをHDP-4に設定しました。
システム全体でみると、20Hzから40kHzまでフラットなレスポンスとなっています。
超高域ユニットはおそらく60kHzまで伸びているはずですが、デジタル信号処理が96kHzなのでアナログ信号は48kHz程度までとなり、そこまでは測定することはできません。
DEQXは操作方法のコツを得たらとても有効だという印象を持ちました。(編集者注:多くのDEQXユーザーはディーラーによる設置調整作業を利用していますが、Greg氏は自分でやりました。)
私の場合、アクティブ・クロスオーバの動作はとても複雑になりましたが、効果は抜群です。
これほどの大型システムともなると、音響測定で満足いくデータを得ることは難しいです。
しかしながら300ポンド(136 kg)もあるシステムにも関わらずその測定はさほど難しくはありませんでした。
そして、DEQX内部の設定は複雑なのにボーカルの帯域が常にとても自然だということが分かりました。
これは、他のいかなる手段をもってしても不可能なことです。
直線位相フィルタと時間補正の結果だと考えています。
このような電子機器は極めて大歓迎です。
Greg
※)脚注:DEQX HD-Activeは、音量の最大ダイナミックレンジ、ドライバの線形性、自然な拡散性、そしてクロスオーバーの分解能を維持できる急峻な直線位相クロスオーバーにより各ドライバに対して、時間と周波数領域を独立して補正します。
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