< 前回の調整から4年ぶりの再会となる田中伊佐資さんの再生システム >
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■ 感 想 文
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・パソコンに保存している「オーディオ購入覚え書き」(妻に見られるとまずいのでファイル名
は「デジタル伝送の問題点」としました。)を見ると、最初にDEQXを購入したのはちょうど
10年前の2007年でPDC-2.6Pでした。(この頁を奥様がご覧にならないことを祈ります)
・その後、直ぐにHDP-3が発売されてヴァージョンアップ。
・2014年にはこれも発売直後のHDP-4にグレードアップして現在に至っています。
・我が家では3ウェイのホーンスピーカーをマルチアンプで駆動しているためチャンネルデバイ
ダー機能を持つDEQXは必須であり、10年間灯が消えたことはありません。
・ただ、昨秋の終わり頃、左チャンネルからザワザワ・チチッというような小さなノイズが聞こ
えるようになりました。
・数十分に一回程度ですが、音楽に没頭しているときに出ると・・・・・
・経緯は栗原さんに別項で説明してもらいますが、メイン基板をそっくり交換してもらうことで
このノイズの問題は完全に解決しました。
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・せっかくなので、これを良いきっかけと解釈し、納品がてら、栗原さんとその片腕(両腕?)
の濱崎さんに再調整をしてもらうことにしました。
・というのも、部屋は5年前に比べてルームアコースティックのパネルが増えたり、レコード棚を
置いたりで環境が大きく変わっています。
・室内の音響的な特性も前回とはだいぶズレていることは間違いありません。
< 突然の撮影にも自然体の田中伊佐資さん >
< 2008年11月当時のシステム(HDP-3)>
・しかし僕はWindowsの操作やDEQXのテクニカルなこと、そして英語もまるで不得手で、設置
してからなにもいじらずそのまま使ってきています。
・地道に覚えようとする「まめまめしさ」は持ち合わせていませんので、音に決定的な不満がな
いことを良しとして、生来のずぼらぶりをずっと発揮していたわけです。
・今回の調整で改めてお二人が計測した結果を見ますと、部屋は物がゴチャゴチャ多いせいか、
データ的にはどこかの帯域で、ひどいでっぱりやへっこみはなさそうです。
・再設定が完了したとのことで、早速聴き慣れているビートルズやニール・ヤングのレコードを
聴いたわけですが、設定云々以前の話としてまず音質がクリアになっています。
< 巨大なターンテーブルをシンクロナスモーターでダイレクトドライブするプレーヤー >
・栗原さんの説明では「DEQX社は予告なき変更を続けていて、少しずつですがパーツを含めて
基板がリファインされています」とのこと。これは思いもよらなかったです。
・そしてクロスオーバーや遮断特性の数値はまったく同じでも、部屋の現状にマッチした設定を
正確に行ったことで、DEQX効果がより明白に出ました。
・音像が滲まず、定位がぐぐっと向上しています。一粒一粒の音が平面的ではなく、立体的に
なったようです。音場そのものも広がりがあります。
・今回は再設定をすることで音が多少なりとも良くなるだろうな思っていました。
・ところが実際には、多少とかいったレベルではなく大きなリニューアルになりました。
・やっぱりモノグサはいけません。ケガの功名とはこのことでしょう。
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・ところで、僕はDEQXとパワーアンプの間にヴォリューム・コントローラーを入れています。
・これはDEQXをフルビット稼働させることが目的です。
・ただ、3ウェイですので通常のステレオ2チャンネル分のVRでは間に合いません。
< リニアトラッキングアームを備えたプレーヤーと、左側が8chの電子ボリューム >
・そこで現在は8チャンネルを備えたSPL社のModel 2618 Volume8を使っています。
(3Way×L/R=6チャンネル分を使用)
・電気的にはパーツやケーブルが増えるのでかなりのロスになります。
・またDEQX単体でもビット落ち感はありませんので不要といえば不要です。
・しかしボリュームを入れることによって音が濃厚になります。
・デジタルの微妙にシャラっとした感じを下から支えてアナログっぽい太さが出る。例えるなら
秀逸なライントランスをかましたような感じです。
・僕は仕事以外ではレコードしか聴かないので、鮮度が多少落ちようともこのあたりのテイスト
はとても大事です。
・ただしこの8ch-VRは業務用なので、クリズラボにはDEQX用に特化した6連のアッテネーター
をぜひとも作ってもらいたいと思っています。
・音量調節にいちいち席を立つのが面倒くさいのでリモコン操作ができればなお良いです。
・栗原さんはそれについてなんとなく青写真があるようなので、この場を借りて強くリクエスト
させてください。
・よろしくお願いします。
田中伊佐資
修理項目
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■ ノイズの発生原因と修理(クリズラボの対応)
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・HDP-4が時々ノイズを出します。左chのホーンから聞こえます。との連絡が入りました。
・DEQXを取り扱って10年。ノイズの発生は初めてなのでまずは状況の確認から。
・頻度は数十分に一回程度とのこと。直ぐに現象が出れば良いのですが忍耐が必要かも ・・・・
・待つこと30分 。出ました!「ピチッ」と言うノイズが確かに聞こえました。良かった(笑)
・「L3」からのノイズと判り、回路図とにらめっこ。コンデンサーが怪しいと判断しました。
・しかし、コンデンサーを1個交換するのにオーストラリアまで送るのか ・・・・
・拡大レンズを駆使すれば何とかなる。と、無謀にも実行することに。
・大きさ2o程度のチップコンデンサーを交換するとノイズはピタリと止まりました。
・半日ほど様子を見ましたがノイズは出ません。大成功!直ぐに送り返しました。
・すると2日後 ・・・・「 しばらく大丈夫でしたが、出ました!」とのこと・・・ガクッ。
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・田中氏宅はマルチアンプ方式なのでDEQXがないと音が出ず、お仕事にも支障が ・・・・
・これ以上の時間は掛けられないと判断して基板を取り寄せて交換修理としました。
・オーストラリアから4日ほどで基板が届き、クリズラボで交換して無事に修理完了。
・この後の話は上の
リポートに続きます。
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■後日談
・手元に残った基板をオシロスコープを使って徹底的に調査しました。
・半日掛かりで調べるとOP-Amp-IC(写真のU38)にたどり着きました
(最初に交換したのが水色のコンデンサーです。)
< 通常50円程度で買えるICが何と1,000円 >
< 交換したコンデンサーとOP Amp IC >
・ICの品番を確認して発注しようと価格を調べると何と1,000円 ・・・ 1個です。
・この手のICは普通50〜100円程度です。こんな高価なパーツを使っていたのか ・・・
・届いたICは写真の大きさです。これを表面実装の基板上で交換!!!!
・しばし酒類を絶って手の震えを鎮め、大型の拡大鏡を覗きながら無事に交換完了。
・数日間様子を見ましたがノイズの発生は皆無。修理は成功です。
・しかし、コンデンサーの交換で半日以上もノイズが発生しなかったのはなぜ?
・ハンダによるヒートショックで一時的にICのノイズが消滅した可能性もありそうです。
・いずれにしても本体を二度も送って頂くことになり申し訳ありませんでした。
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■ DEQX調整の結果
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・ここからは4年ぶりの再調整結果を簡単にご紹介します。
[図1]スピーカーシステムの周波数特性(ホーン軸上1mで測定)
・WOOD WILL(ウッドウィル)製のエンクロージャとホーンによるスピーカーシステム。
・200Hz付近の僅かなディップ以外は極めて平坦な特性で、低域は15Hzまで伸びています。
[図-1]マウス重ねるとDEQXのルーム補正を実施した場合の特性を示します
・DEQXのスピーカー補正で100Hz〜20kHzまで(青線枠内)がほぼ平坦になっています。
・しかし、聴取位置での特性は部屋の影響を大きく受けてしまいます。
・40〜80Hzまでのディップと、7kHz以上で3dBほどのレベル低下は補正したい部分です。
・DEQXのルーム補正(オンマウス)で20Hz〜20KHzまで平坦な特性となりました。
・「低音フェチ」と自称される氏の要望で、分厚く、超低域まで伸びきった特性に・・・
・更に太古のアナログLPレコードが心地良く聴ける専用の設定もご用意させて頂きました。
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■ DEQX用外付けボリュームについて
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・ご提案のボリュームにつきましては前向きに検討したいと思います。
(永田町ではやらないという意味ですが、クリズラボはやります。)
・構想がまとまり次第ご案内させて頂きますので、少しお時間を戴ければと思います。
Kurizz-Labo:栗原信義
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