■ ご了解を頂いた方々のシステムと試聴リポートを掲載させて頂きました.

2016年1月:神奈川県のYN氏 / DEQX導入と初回調整後のリポート

                            (2016年1月14日掲載)

■ シンプルにまとめられた本格派の自作3Wayマルチアンプシステム。

■ DEQX(HDP-EXPRESS)導入の1年後、初回調整の依頼がありました!

 
  < カットオフ250Hzの大型エクスポーネンシャルホーンが印象的なシステム >

 

  < 自作ATTでシステム全体の理想的な動作を実現(クリックでPDF表示)>

■ システムの特徴は良質なユニットを使用した入魂のスピーカーシステムです。

■ そして手持ちの機材を上手に利用したマルチアンプ方式の構成もさすがです。

■ また、時々の再生環境に適した音圧レベルの上限を自作のATTで調整する仕組み
  はYN氏の再生システムに対する考え方を端的に示したものとなっています。

■「ATTで必要な最大レベルを設定。実際に音楽を聴くレベルはDEQXのリモコンで
  調整(絞っても10dB以内)しています。」とのことでした。

■ これは、システム全体の動作レベルを極めて合理的な状態に保つことができると
  同時 に、良好なS/Nを確保出来る大変優れた方法です。


 
 < 左上がHDP-EXPRESS、左下が今回導入されたクリズラボ製のパワーアンプ >

■ 各スピーカーユニットは太めのコードによる最短距離でパワーアンプと接続する
  など、音質向上に関わるポイントを押さえたシステムという印象でした。

■ 現状に於ける最大の悩みは低域が出ないことだそうですが・・・・・

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システムの調整を終えた2週間後、YN氏から嬉しい感想文が届きました


自作のスピーカーシステムとは言っても某オーディオショップで販売されていた
  ものをほぼコピーした感じです。


元となったスピーカーに出会った時は一目惚れ状態でした。

直ぐにも欲しいと思いましたがその時は買うことが出来ず、美しく鳴っていた記憶
  を頼りにユニットやボックス、ホーンなどを徐々に買い揃えてきました。


ウーファーBOXにツィーター用の穴を開けるなどの改造をしてようやく現在の形と
  なりました。

完成したシステムでしばらく聴いていましたが、中高音には満足したものの低域が
  決定的に足りないという思いがその後の大きな課題となりました。


ALTECの515-8-GHP(38㎝ウーファー)を200㍑というやや小ぶりの密閉箱に入れ
  たため容積が足りなかったのだと思います。しかし簡単には解決できません。


何とかしたいという思いから安物のイコライザーを導入した事もありましたが、
  音が濁る感じでとても納得できず、泥沼に入り込んだように感じていました。

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解決手段はないものかとしばらくネットで検索をしていた時に偶然「DEQX」とい
  う製品がヒットしました。


説明を読んでみると周波数特性の補正だけでなくホーンスピーカーの宿命でもある
  時間軸のズレまで揃えてくれると書かれています。


さらに調べていくと、なんとHDP-EXPRESSの中古販売のページがありました。

慌てて販売元のクリズラボに電話すると「HDP-EXPRESSの中古品ですか?・・
  つい最近入荷はしましたがHPにもまだ掲載していませんが?」とのこと。


どうやらHPサーバーに残っていた中古品販売のページをヒットした様です。

しかし、このラッキーは買えということか!

と、思い直し、直ぐにHDP-EXPRESSの購入が決まりました。

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その後、パワーアンプの修理や6連の固定抵抗式ボリューム(ATT)を製作した
  りして少しずつシステムを整備してきました。


DEQXの購入から1年が経った頃、どうにかシステムが出来上がったのを機会に
  改めて初回調整をお願いした次第です。


調整に際しては今までのアンプが少しノイズを出ていたこともあり、運良く年末
  の特価販売中だったクリズラボ製KLP-10W-STアンプを購入することにしました。


調整当日に持参して頂いたアンプを設置していよいよ調整がスタートしました。

最初はスピーカーの測定でしたが、私の想定よりも反響音対策をしっかり行うの
  だなと感じました。

 

 

     < スピーカー背後の空間とテレビ画面に布団を掛けて測定 >

 「両スピーカーの間にあるテレビにはこたつ布団を掛けましょう」
 「部屋の角には背の高い鏡(姿見)を利用して毛布を掛けましょう」


自分一人で実施していたらここまでの対策はせずに測定していたかも知れません。

測定を終えて反射音のカットやチャンネルデバイダーの設定を行う時でした。

ミッドレンジとツイーターの帯域が大幅に重なっているため、かなりの干渉が
  生じることがPC上のシミュレーションで判りました。


実際の聴感上でもこの状態だと干渉帯域の音が強調されたり、透明感が下がる
  ことがあるとのこと。


「スロープを急峻にして可能な限り干渉を排除しましょう。」とのことで、何と
  300dB/octのスロープに設定されました。


この設定は多分DEQXでなければ出来ないと思われます。

その後もてきぱきと測定を進められ、無事完了となりました。

測定中に出した様々な疑問や課題などにも丁寧に回答頂き、安心すると共に自分
  の頭の中が整理できて本当に助かりました。

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DEQXには再生音に対して基本的な情報を設定出来る4つのモードがあります。
           
[ Profile(プロファイル) P-0 / P-1 / P-2 / P-3 ]

「P-1」には正確な音の再現を目指した「標準モード」が設定されました。

「P-2」には1950年代の古い時代のJAZZに合わせた「オールドジャズ」モード

「P-3」は深夜などに小音量で聴いてもメリハリがある「ラウドネス」モード
  などを設定して貰いました。

ちなみに「P-0」にはDEQXの補正効果をなくして以前の低域不満状態となる
 「バイパス」モードを設定してくれましたが、特に必要はなさそう(笑)です。



 
     < 手前のテーブルがある場合とない場合での試聴位置での変化は? > 

 全ての調整が終わって音が出た瞬間、長年の課題だった低域が生まれ変わって
  いました。


 低域が別のシステムではないかと思うほど改善された!!


  しっかりと低域が出でて、しかも自然です。

  以前導入したイコライザーとは全く異なるものです。

  試しに測定用の信号を入れてみると何と27Hzから音圧を感じます。

 全体の音がとても自然になった!!


  曲の中のこの音がこんな揺らぎ方をしていたのか・・・・等々、音の細部が
  より明確に把握できるようになりました。


  また、空間的な表現が大幅に改善され、スピーカーを全く意識せずに楽器や
  ヴォーカルの定位も明確に分かる様になりました。


 システムや部屋の特性などをデータで確認できる!!


  これはDEQXの大きなメリットだと思いますが、データで客観的に状態を確認
  できるというのは本当に素晴らしいことだと思います。


  部屋や再生機器が変わった時にどのように音(特性)が変化したのかを客観的
  に判断できるのは非常に便利です。


  オーディオ仲間がたくさんいる方ならまだしも、一人で楽しんでいる場合は
  特に有効だと感じました。


 最後に!!

 

  音への不満が解消して音楽をゆったりと聞けるというのはとても気持ちが良い
  ものだということを改めて感じています。

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■ 初回調整から一週間ほどが過ぎましが、今だに「あのCDはどんな音で鳴るのか」
  「この曲は?」などと、次々に聴きまくっているのが実情です。


 
  <右手前の小型スピーカーは映画などをサラウンドで楽しむときのリア用> 

もし、今後の課題があるとすれば広い部屋に引っ越す(笑)事くらいでしょうか。


この度は本当にありがとうございました。

                              相模原のYNより




■ YNさん、嬉しい感想文をありがとうございました。

■ ここで文中に登場した幾つかの話題について触れておきたいと思います。

■ 最初はミッドレンジとツィーターの干渉です。

 
     < Lchスピーカーの測定結果(
青:Low赤:Mid緑:High)>


 青:Low赤:Mid緑:High)>

■ 上の二つのグラフはMidレンジのホーン軸上1mで測定した周波数特性です。

■ MidとHighの再生特性が3kHz~10kHzまで見事に重なっているのが判ります。

■ この状態で高域のクロスを6kHz-48dB/octにセットすると下図の特性となります

 
   < クロスオーバーと合成特性:赤丸部分でリンギングが発生している>

■ この特性は二つのユニットから出る音が干渉している状態を示しています。

■ 同じクロスの周波数でスロープを300dB/octにすると干渉が激減します。(下図)

 
    < クロスオーバーと合成特性:リンギングが大幅に減少した様子 >

■ マルチユニット方式ではユニット間の干渉は避けられない問題です。

■ しかし、理論的には干渉を少しでも減らした方が音質的にも有利なはずです。

■ DEQXは位相が変化しないFIRフィルターでクロスオーバー特性を作ります。

■ 干渉の程度やユニットの位置関係にもよりますが急峻なフィルターが有効な
  場合もありますのでトライしてみるのも一考だと考えています。

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■ 次にスピーカーとリスニング位置の間に鎮座する大きな机の有無です。

 
    < 机の有無による特性の相違(Lch)ルーム補正前の特性で比較 >

 
    < 机の有無による特性の相違(Rch)ルーム補正前の特性で比較 >

■ 目の前でいかにも音を反射しそうな机(ちゃぶ台)の影響は?

■ YNさんの強い希望もあり、改めて測定をしてみました。

■ すると予想に反して300Hz付近を中心にした帯域で僅かな変化が出ました。

■ もっと高域で、もっと大きな違いが出るかと思っていましたが意外でした。

■ あくまでもスピーカーと机とリスナーの相対的な位置関係によるものだと思い
  ますが、今回の状況下では机が有っても無くても大きな違いはなさそうです。

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■ 今回、ルーム補正後の最終的な再生特性の測定を忘れてしまいました。

■ YNさんにお願いし測定して戴き、ていずれ掲載できればと思います。

■ 結果を予想すれば、上のグラフの100Hz以下と300Hz付近の落ち込みが解消され、
  30Hzから20kHzまでがほぼフラットになっているものと思われます。

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■ 自作のATTを組み込んでシステム全体を適正レベルで動作させるというYN氏の
  アイデアは大変優れた方法だと思います。

■ クリズラボでも以前ATTを利用したシステムを組んで実験をしたことがあります。

■ その効果は機器の動作レベルの問題を根本的に解決すると同時にラインノイズ
  などを最小にする効果もあり、極めて有効な手法だと思います。

■ 様々な苦労を乗り越えてDIYで完成した良質なオーディオシステムで聴く音楽!

■ 感想文からも、ご本人のみが味わえる至福の一時なのだと改めて感じました。


                               Kurizz-Labo

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