■ ご了解頂いた方々のシステムと試聴リポートを掲載させて頂きました.
2015年5月:埼玉のSA氏/新機種 HDP-5導入
(2015年5月30日掲載)

■ 凄さと愛嬌?が同居したSA氏オリジナルのスピーカーシステム。

 
      <10㎝×30個の低域、1個のMidrange+ドーム型のTweeter>

■ 埼玉県のSA氏が製作した入魂のSPシステム、第三作目です。

>まるでウルトラマンに出てくる宇宙怪獣のようです。
 (写真を見た、某オーディオ誌編集長の言葉です。)

■ しかし、これが単なる思い付きでないことは後から判りました。
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■ 氏の思いは、ひたすらにHi-Fi(高忠実度)再生を実現すること。

■ それにはまずスピーカーから正しい波形(音波)を引き出すこと。

■ そのため、振動板前面の音だけを取り出す工夫から始まったとのことでした。

■ 3月中旬(二作目が完成?)に初めてメールを頂き、やりとりが始まりました。

■ それから一週間後、なんとHDP-5のご注文が舞い込んだのです。

■ DEQX社にオーダーすると、この製品の量産ロットが丁度始まったとのこと。

■ 4月後半には入荷したのですが、今度はクリズラボの出荷準備が整いません。

■ そんな中「三作目を製作中なので納品は後日で」とのメールが届きました。

■ 渡りに船!正直ホッとしたのですが、同時に送られて来た写真を見てびっくり。

   
       < 一作目 >             < 二作目 >

■ 一作目、二作目の写真でしたが、これはただものではないと直感・・・・・

■ 通常の測定方法でDEQXの補正が正しく機能するのか・・・

■ しかし、SA氏は次々に試作を重ねる中、どれをDEQXで最適化するのか????

■ むしろDEQXをツールとして使いこなして戴くのが氏にとっては最適なのでは。

■ ならば最初は使い方のご教授で済まそう、と勝手な方針を立てて一安心(笑)

■ 三作目が完成したとのことで、5月下旬、満を持して納品となりました。

 
     <初回調整当日の再生システム/スピーカーは第3作目を使用>

■ 調整を終えたその日と翌日、SA氏からの感想文が届きました。


<調整当日の夜に届いたメール>

栗原様

 本日は遠いところおいでいただき、誠にありがとうございました。

 実は、あれから、ずーーーっと、聴いておりました。

 DEQXは今までのAVアンプを使った補正とは格が違う感じです。

 試作3号機の特徴を非常によく活かしてくれています。

 この正月に遊び半分での特許出願作以来「波形再現」の夢に取りつかれています。

 無鉄砲にも試作3号機までやってしまいましたが、あながち完全な間違いでもなさそうな気もしていました。

 そんな中、今回の栗原様の補正で、ますますその気がしてきてしまいました。

 感想は直ぐにでも、そして、いくらでも書きたい気分です。

 でも、今はとにかく聴くのに忙しいので、失礼いたします。

(「聴くのに忙しい」・・・・その気持ち、痛いほど判ります。栗原)

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<翌日に届いたメール>

昨夜は失礼しました。改めて感想を送ります。

 DEQXによる補正後の音は、この変わったスピーカーも大きな可能性を秘めているんじゃないか、という感触を一気に高めてしまうものでした。

 火に油を注がれてしまったなあ、などとうそぶきながらも笑みをこらえきれない状態なのです。

 勿論、なにはばかることなくドンキホーテできるロー(老)アマチュアの特権なのだー、との理論武装くらいはちゃんとしてのうえです。

 
       <SA氏の最新型SPシステムとDEQXの新型機:HDP-5>

 補正セッティング作業の合間に栗原様からDEQXの思想を拝聴しました。

 (上の写真にあるノートPCでDEQX社の説明ビデオをご覧戴きました。)
             ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
             

 すると、全くこちらの考えそのもの、というか、こちらが汗水たらしてやっと到達した考えがとうの昔にDEQXにあったということでしょうか。

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ここで少しだけ私の考えていることを述べさせて頂きます。

 DEQX社の説明ビデオでは「周波数特性のフラット化」と「全帯域での群遅延時間を一定にする」ことが必要と述べられています。

 これは、オーディオを「ソースに刻まれた音を再生する装置」であると定義した時、誰もがいつかは到達せざるを得ない極めて当然なことだと考えられます。

 しかしながら、私がかってどっぷりつかっていたオーディオの常識では、その当然のことを知る術がほとんどなかったように思われます。

 少なくとも、一般的なオーディオ誌をいくら読んでも自分の装置の音の悪さの原因について、手がかりさえ掴めない状況でした。

 音質を左右している物理的な因子は何なのか?というようなアプローチは皆無といっていいほどで、仮に何らかの因子を扱っていても、結局それが音に「どのように」「どの程度」関係するのかなど納得できるような「客観的」「定量的」な話は全くなかったように思います。

 あるのは、抽象的な言語遊びに類するものや、完全な思い込み的ハードいじりばかりだと感じていました。

 
    <新型SPシステム用デジタル入力パワーアンプ:DENON PMA-50>

 そんな時に、最近のAVアンプに付属しているデジタルフィルターを用いた音場補正技術に接したのがきっかけで、以下のような考えに取りつかれたのでした。

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 音とは「空気密度の時間変化」であり、それ以外の何ものでもありません。

 そして、レコードやCDなどの記録媒体は「ある地点における空気密度の時間変化を電気信号に変換して記録したもの」ということになります。

 これらは、横軸に時間、縦軸を音圧で表した「音の波形」として示す事が出来ます。

 この「音の波形」が同じであれば「同じ音」であり、「音の波形」が同じなのに「音が違う」ということはありません。

 逆に「音が違う」のであれば「音の波形が違う」はずだ、ということです。

 つまり、ソースに刻まれた「音の波形」が、そのままスピーカーから「再現」されれば理想的な再生音になるはずです。

 ここにスピーカーから「音の波形を再現」する夢がもたげてきました。

 しかし、今更これを言っても「当たり前でしょう!」といわれるのが落ちです。

 しかし、今のオーディ界の現状は「音の波形の再現」とは全く無関係なことを何の根拠もなく延々と繰り返しているのではないかと思わざるを得ません。

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 さてここで、現実のスピーカーを考えた場合、大なり小なり「群遅延」という現象が存在するため、原理的にみて「波形の再現」は不可能であるという結論になります。

 スピーカーが電気信号を機械的な振動に変換して空気を動かす装置である限り、群遅延を根本的にゼロにすることは不可能でしょう。

 しかし、近年急速に進歩を遂げたデジタル信号処理を利用することで不可能が可能になってきたことを実感として経験したのです。

 デジタルフィルターは「音の波形」を再現できるスーパーツールだということです。

 その技術を搭載した最近のAVアンプで音場補正を行って見ました。

 
    <氏がここまでA/Vシアターに凝っているとは知りませんでした。>
 
 (音場補正に使ったA/Vアンプは既にあったわけですね・・・・なるほど。)

 すると今までのスピーカーやアンプ、果てはアクセサリー類まで動員しても全く満足できなかったシステムの音がある程度満足できるもの変化したのです。

 気をよくして自分なりに理想に近いと思われるスピーカーを考え、試作スピーカーで音場補正の効果を確認すると今までよりも効果的であることが確認出来ました。

 であるならば、音場補正をもっと精密に掛けたらどうだろうか、という考えが持ち上がった時にDEQXの存在を知ることになりました。

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 DEQXの到着を待つ間に、試作の1、2号機を発展させ、低域を充実させたスピーカーシステムを作ることにしました。

 低域は今までより大型の10㎝フルレンジユニットを30個使い、中域は同じユニットを一個で構成、高域にはフォステクスのドームツィーター(FT-48D)を使います。

 完成した試作3号機をデジタルチャンネルデバイダーでクロスを600Hzと2.5kHzに設定し、3Wayに分割して鳴らしてみました。予測された100Hz以下の減衰はA/Vアンプで補正します。

 また、この試作3号機に合わせて新たにDENONのデジタルパワーアンプを3台導入しました。デジタル信号のまま入力出来るので波形の再現にも有利だと考えています。

 
    <DEQXの新製品「HDP-5」と3台のDENON製デジタルパワーアンプ>

 DEQXを導入した効果は既に冒頭で述べましたが、A/Vアンプによる補正とは格が違うという言葉がぴったりの期待以上の向上効果が得られ、満身笑みが止まりません。

 今後は、波形再現がどの程度できているのかを検証していきたいと思っているところです。

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 最後になりましたが私の試作スピーカーは音場補正が前提であり、DEQXと出会ってからは「DEQX命」とも言えるものです。

 この先は自分で設定できるようにしておかないとバチが当たるかもしれないと気が付きました。

 そんな折、丁度DEQX調整セミナーがあるとのお知らせが届きましたので、これは行かねばと思い立ち、早速エントリーさせて頂きました。

 いろいろ述べてきましたが、お花畑がまじかになってきたこの年ではもう恥も外聞もありません。変わったスピーカーを作る変わった奴とお許しください。

 ただ、「試作品」でなく「失策品」とならなければいいと思っています・・・。

                          埼玉県のSAより



■ 3月初旬に頂いた最初のメールに、「映像の世界」では色ズレや像の歪みは測定器の助けも借りながら完全にコントロールされているのに「音の世界」はスピーカーから出た音に対して何もコントロールされていないように思える。とのお話しがありました。

■ 私も「画質と音質」の評価については同様な主旨のことを以前に書いていたことを思い出しました。

■ そして次のメールで送られてきた試作1号機と2号機の写真(前掲)を見てびっくり。

■ 「音の波形」を再現するために造ったというスピーカーにはSA氏の心意気を感じました。

■ 面白い、DEQXの考え方がお役に立つならチャレンジして見たいと思いました。

■ 「音の世界」はまだまだ進化しなければいけない、進化できるはずだ!と思っている私にとっても久々に遊び心をくすぐられる出会いでした。

■ 「遊び半分で特許出願」とのお話しもありましたが、実は氏が特許事務所の所長さんだと後で知りました。

■ 音質へのアプローチがちょっと違うのも納得です。

■ 振動板の前面から出る音波のみを使うという手法は今までにもありました。

          
        <B&W Nautilus>    <TH氏製作のSP

■ 基本的には振動板の背面から出る音は消音し、余計な音を出す恐れがあるBOXやバッフルを持たない形式のスピーカーですが、SA氏は群遅延時間が最も長くなる低域に着目して、ここをマルチユニットで解決しようとするアプローチに見えました。

■ しかし、BOXやバッフルはSPユニットの低域特性を確保するための重要なパートナーであり、省略した場合はこの分を別の手段で補う必要がある事は自明の理です。

■ これをスマートに解決できるのがDEQXだと思います。

■ オーディオを趣味として捕らえたとき、また、DEQXという強力なツールが利用できる今、好きなユニットを好きなように組み合わせて多彩でユニークなスピーカーシステムを自ら作り出す喜びを味わって頂くのもクリズラボの仕事だと改めて感じました。

■ SA氏に頂いた刺激を改めて多くの方と共有できればと思います。

              Kurizz-Labo店主:栗原

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