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スピーカーの逆相接続
2022-01-V1.0
出展/出所 : Kurizz-Labo(栗原信義)
ここではスピーカーの逆相接続と音の聞こえ方について説明しています。


耳で聞いて判断するものだから測定には意味がない ・・・ 本当でしょうか。
オーディオは音響や電気の理論に基づいた科学の上に成り立っています。

意外に多かったのはユニットの故障や接続ミスに気付かずに使用されていることです。

システムをチェックし、可能な測定を通じて機器が正常であることを確認することは
オーディオファンなら日常的、定期的に実施すべき大切な事項だと思います。
■ スピーカーの「逆相接続」とは

 

・ スピーカーユニットは端子にの電圧を加えると振動板が前に動きます。
※ JBLのプロ用ユニットなど、一部の製品では振動板が引っ込む方向に動くものも存在します。
・ 試しに1.5Vの電池をスピーカーにつないで振動板の動きを見て下さい。
※ 2Way以上のSPシステムでは電池をつないだ瞬間にウーファー以外はクリック音が出るだけです。
※ 1.5Vは0.3W(8Ω)に相当します。一部の超デリケートなユニットでの実施では注意が必要です。

・ 実際にスピーカーに加わるのは次のような交流(音楽)信号です。

<スピーカーに加わる電気信号の波形>

・ 左右が正相で接続されたシステムと逆相接続の場合を考えます。

 
[ 左右とも正相で接続されたシステム ] [ 片側が逆相で接続されたシステム ]

・ 中央で歌っている歌手の声が左の図では両スピーカーの中央から聞こえます。
・ 右の図ように接続されたシステムの場合、どのように聞こえるでしょうか。
・ 実際に左右どちらかのスピーカーケーブルを逆相に接続をしてみて下さい。
 (アンプの出力か、スピーカーの入力でプラスとマイナスを逆に接続する)
・ 正相と逆相を切り替えながら音の聞こえ方の違いを感覚として覚えて下さい。

・ DEQXがセットしてあればあれば逆相接続はマウスのクリックで出来ます。
・ PCをつないで「DEQX Control Panel」(下図)を出します。


・ ボタンを押すとそのチャンネル(帯域)のスピーカーが逆相でドライブされます。
・ マルチアンプ方式では帯域によって影響の度合いが違う事も体感してみて下さい。
・ 最初に中央で、次にどちらかのスピーカーに寄った位置での変化も確認します。
・ 音源は中央に定位したソロボーカルや楽器などが分かり易いと思います。
・ 実験が終わったら忘れずに全てのボタンを「+(正相)」の状態に戻します。
< 装置を逆相にするのが面倒な方はこちらで >

■ 実際のシステムで逆相接続が見つかった例

・ この例は下図の[図1]に示したバイワイヤリング接続のシステムでした。
・ この方式は多少のメリットはありますが接続が複雑になるため注意が必要です。
・ 調査の結果、逆相で接続されていたのは図の青丸部分(R側の低域)でした。



■ 正相と逆相

・ 正相や逆相というのはあくまでも相手があって発生する現象です。
・ 図のシステムでは高域側は正しく接続されており左右は正相です。
・ L側は高域と低域もシステム的に正しく接続されていて正相です。
・ R側の低域だけが全体に対して逆相に接続されていることになります。

・ この例には大きな落とし穴が

・ 音楽を聞いただけではこの逆相接続の弊害が容易には判らないことです。
・ 判りにくい状態なのですが、実は再生音に重大な影響があります。
・ 今回の例では低域と高域のクロスオーバーが350Hzに設定されています。
・ 低域は定位感(方向感)が弱いため位相関係を判定するのは困難です。
・ 特性に注目すると逆相の影響は[図3]の赤丸部分(R-ch)に現れます。
・ ここは音の基礎となる帯域でボーカルの質感などに大きな影響があります。
・ ただし、耳の位相に関する敏感な帯域(300Hz〜5kHz)とは異なります。
・ このため「耳では判りにくくても音楽には大切な帯域」に影響が出ます。
・ ボーカルなどの低音域がぼけるというやっかいな症状として現れます。

・ 逆相発見までの経緯

・ スピーカー測定の結果(周波数特性)を見ると[図5]のようになりました。
・ 有名メーカーの製品でありこれほどの個体差が生じることは通常はありません。
・ 原因探しに1時間。スピーカーケーブルの1本が逆相に接続されていると判明。
・ 接続し直して測定した結果は左右が綺麗に揃った特性[図4]となりました。
・ 今回の発見がなければ「何か変だ」と思いつつも聴き続けていたでしょう。

・ オーディオ装置は音楽を聴く道具であり科学技術の上に成り立っています。

・ しかし、聴覚はもの凄く鋭い反面、もの凄く「いい加減」でもあります。
・ 風邪を引けば低域の感度が極端に低下します。
・ その時の気分や、知り得た情報で良否の判定が大きく異なってしまいます。
・ 聴いている時は判ったつもりでも、その印象は数分で消滅してしまいます。

・ 昼と夜では音量感が全く異なり、耳の周波数特性も大きく変わります。
・ 曲の途中で切り替えるとタイミング次第で印象が大きく変わってしまいます。
・ 切り替えた時の僅かな音量の変化でも良否の判定に大きく影響します。
・ 調査対象の価格が判ればそれだけで良否判定に大きなバイアスが掛かります。
・ 価格以外でも苦労して入手したものはそれだけで良質判定に影響します。

・ そして、今回の事例から見えてくる可能性の一つは、スピーカーケーブルを
  高価なものに交換した時、偶然にも正しく接続したことで逆相が解消された
  とします。(端子の接触不良が改善される可能性も大です。)

 「このケーブルは低域のモヤモヤ感が解消し、定位も大幅に向上した。価格
  以上の素晴らしいケーブルだ!」と評価される可能性が極めて大なのです。

・ オーディオは音響や電気の理論に基づいた科学の上に成り立っています。
・「耳で聞いて判断するものだから測定は意味がない」・・・ 本当でしょうか。

・ システム全体の綿密なチェックや測定を行い全ての機器が正常に動作して
  いることを確認することは音楽を聴く前に実施すべき基本事項なのです。


・ DEQXは測定器でもあります。
・ スピーカーと部屋の音響特性を測定し、その結果に基づいて補正を行い、
  プログラムソースの魅力をそのまま人の感性に伝えるためのツールです。
・ DEQXの調整時、通常では見つけにくい機材の欠陥や接続ミスなどを発見する
  ことは決して少なくありません。
・ 有効に活用して素敵なオーディオライフを楽しみましょう。(CMでした)





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