No. | ユーザー | DEQXの導入機種とシステムの特長 | 掲載時期 |
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129 | 神奈川県 KK氏 | PDC-2.6Pを2台使用した6Wayシステムの構築に初挑戦 | 2023年10月 |
[ リア側に80㎝のサブウーファーを配置した6Wayスピーカーシステム ]
[ システム図(スピーカーは片チャンネルのみ表示) ]
[ 再生機器群 ]
[ リスニングポジションと背面のサブウーファー ]
オーディオ歴はかれこれ40年ほどになります。
思い返しても実に様々なスピーカーユニットやアンプなどを交換しながら6wayのマルチアンプシステムを楽しんできました。
目標は「くっきり、はっきり、柔らかく」ですが満足な結果はなかなか得られませんでした。
2008年頃、高音域を3個のゴトウユニットに変更して現在に至っています。
使用ユニットは高音がSG160、中高音がSG370、中音がSG570です。
中低音はYLのD75000ドライバーにMB70ホーンを付けています。
低音はJBL4550の箱にTADのTL-1601aをダブルで使っています。
これらのユニットで構成した5WayにフォステクスのFW800を900リットルの箱に入れたSub-Wooferを使用し全体では6Wayとなっています。
クロスオーバーは低音側から、60Hz、150Hz、350Hz、1kHz、5kHzです。
チャンネルデバイダーにはdbxのDriveRack4800を2台使っていました。
マルチアンプ方式も6Wayとなると音響測定をしないと手が付けられません。
しかしパソコンを使った素人の音響測定は機材やソフトの使いこなしがとても大変で安定した結果が得られないなど、随分と苦労をしてきました。
周波数特性やインパルス応答、そしてウェーブレット測定によるタイムアライメント測定なども行いましたが、残念ながら十分な成果は得られませんでした。
さらに、群遅延や位相などの重要な問題には手つかずでした。
こうした経緯の中ですが、実は3年ほど前にほぼ完成したと思える音に到達しました。音に奥行きや立体感が感じられ、苦手なCDやLPもかなり少なくなりました。
6Wayとしてほぼ完成の域と考えていたのですがそれでも若干の硬さや音場の見通しについては不満が残っていたのも事実です。
そんな折、クリズラボからのお知らせ(メルマガ)でPDC-2.6Pの販売があることを知りました。
DEQXはかなり以前から知っていましたが私の理解では自動的に調整してくれて簡単に結果が出る製品だと思っていました。
つまり私にとっては「いじる楽しみがない割に高価な製品だ」と思っていたのですが、今思えば全くの誤解だと判りました。
今年の6月、悩みつつも思い切ってDEQXを購入して実際に使い始めたところ、簡単な自動調整で済むなどと言う考え方はたちまち吹き飛びました。
[ 2台のPDC-2.6Pと2台のdbx製チャンデバ ]
もちろん2台のDEQXを使った複雑なシステムにいきなり挑戦したため、という側面は多々あるのですが・・・
DEQXは基本的に3Wayマルチまでなのでそれ以上になると「Master」と「Slave」という2つの役目に分けて構築するという方法を知りました。
実際には「Slave」側のDEQXで3Wayまでのユニットを1つのチャンネルにまとめ、それを「Master」側に接続して全体で5Wayとして調整することになります。
調整作業の全体像をつかみ、Calibrationソフトの振る舞いとタイムアライメントの限界、フィルターやEQの補正限界などを理解して扱わないと良い結果が出てくれないことも判りました。
一方でソフトの振る舞いを理解するには実際に作業を進めないと得られません。つまり練習しながら本番を遂行するといった難しさがあり、素人の私にとっては相当過酷なものでした。
今回の作業はクリズラボ作成のマニュアルを中心に進めてきましたが、これはとても具体的で判りやすいと感じています。
その上で、今考えれば膨大な質問を栗原さんにメールで投げかけ、その都度丁寧な回答を頂きました。
私の勘違いによる質問も多々あるなか大変なお手数だったと思います。
しかし、こうした手厚いサポートがあってこそ2台のDEQXを使った調整がなんとか可能だったと感謝しております。ありがとうございました。
また今回の調整作業を通じてSPユニットの測定、インパルス応答の読み方、ディレイやEQの入れ方など今まで我流でやってきたことを勉強し直すことができました。
そして、今だから言えることですがDEQXは「いじる楽しみが少ない」どころか沢山あり過ぎて困るというのが実感です。
測定器としても周波数特性はもちろん、位相やインパルス反応、群遅延特性やステップレスポンスなどの機能を備えています。
測定結果のグラフも色別でとても見やすくなっており、高度な音響測定がDEQXだけで可能なのです。
私がやってきたような単体の測定機器を用意する必要は全くありません。これだけでも自作派にとってのコストパフォーマンスは極めて高いのではと感じました。
改めて、いじる楽しみがない割に「高価」という評価も取り下げたいと思います。
[ 高域ユニット用パワーアンプ KLP-10W-ST(下)とクリズラボ製のフォノEQアンプ(上)]
6月半ばにDEQXが到着して以来、休みの度に挑戦してきた結果、調整作業もほぼ一段落したと感じたのが10月の中頃でした。
その甲斐あってDEQX導入前とははっきり違う領域に入ったと感じています。
ノイズ感が極めて少なく、音像は立体的ではっきりしているのに柔らかさもあり、分解能の良い音像です。
低音は力強さが出てJAZZベースがどっしりした中にも高い解像度を持って力強く迫ってきます。
クラシックのオーケストラは鮮明で柔らかみのある繊細な音色です。
間違いなく「今までで最高の音」だと言えます。
夢中でやってきた調整ですが、ここでしばらく聴きこんでから改めてDEQXの設定作業をゼロから行い、更なる高みに到達することが大きな目標となりました。
神奈川県 KKより
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■ 2台のDEQXによる「Master / Slave」方式にチャレンジ
・今年の6月初旬、DEQX(PDC-2.6P)一台をご注文。
・納品後、一週間ほどでDEQXの可能性に気付いたKK氏は・・・
・6月中旬に二台目のDEQXを導入。
・3ヶ月で70通を超えるご質問とともに進捗状況を共有させて頂きました。
・10月中旬、ついに完成の域に到達されたとのご連絡が届きました。
・DEQXを使ったKK氏のシステムを簡単に説明すると次のようになります。
・DEQXを2台使用すると5Wayまでのマルチアンプシステムが構築出来ます
・ところが氏のシステムは6Wsyなので何らかの工夫が必要でした。
・また、DEQXは1mを超えるホーンに対しても何らかの対策が必要です。
・KK氏はこの2つの難問を手持ちの機器を利用することで見事にクリア。
・最終的にたどり着いたシステムの骨格は下図のようになりました。
[図1]DEQXとdbxを利用した完成版の6Wayマルチアンプシステム
[写真1]遅延時間の問題も見事に解決されたスピーカーシステム
■ 2台のDEQXで構成する「Master/Slave方式」について。
・Master側のDEQXは通常の3Wayシステムの場合と同様の働きをします。
・Slave側のDEQXは複数のユニット群をまとめる役目を担います。
・KK氏のシステムでは3個の高域ユニット(下図)を1つにまとめています。
[図2]高域ユニット3個の周波数特性
・Slave側のDEQXで3個のユニットが1つの高域ユニットにまとめられました。
[図3]DEQXのSP補正機能によって一体化された高域チャンネルの周波数特性
・「図2」が「図3」となり、一体化する様子が測定結果からも判ります。
・次にMaster側のDEQXでシステム全体の聴取位置での特性を見てみます。
・下の図がルーム補正前の特性です。
[図4]ルーム補正前の再生周波数特性
・聴取位置では部屋の影響が出ていることが判ります。
・Master側DEQXのルーム補正で大きなピーク/ディップを軽く補正します。
[図5]Master側DEQXによるルーム補正後の再生周波数特性
・30Hzから10kHzまでが±3dB程度に入る良好な総合特性となりました。
・厚みのある低域と充実した中域、そして緩やかに下降する高域が特徴的です。
・ホールトーンの再現を目指した特性に近いとも言えるものです。
・KK氏の最終的な音質評価が特性面からも伺えるものとなっています。
・2台のDEQXを使った複雑なシステムをご自身で短時間に完成させました。
・音響測定を手がけてきたKK氏ならではの快挙だとも言えるでしょう。
・多少時間が掛かってもDEQXによる高忠実度再生への取り組みで得られる高揚感と充実感を多くの方にも実感して頂きたいと強く思った今回の事例でした。
文責:クリズラボ・栗原
・今年の6月初旬、DEQX(PDC-2.6P)一台をご注文。
・納品後、一週間ほどでDEQXの可能性に気付いたKK氏は・・・
・6月中旬に二台目のDEQXを導入。
・3ヶ月で70通を超えるご質問とともに進捗状況を共有させて頂きました。
・10月中旬、ついに完成の域に到達されたとのご連絡が届きました。
・DEQXを使ったKK氏のシステムを簡単に説明すると次のようになります。
・DEQXを2台使用すると5Wayまでのマルチアンプシステムが構築出来ます
・ところが氏のシステムは6Wsyなので何らかの工夫が必要でした。
・また、DEQXは1mを超えるホーンに対しても何らかの対策が必要です。
・KK氏はこの2つの難問を手持ちの機器を利用することで見事にクリア。
・最終的にたどり着いたシステムの骨格は下図のようになりました。
[図1]DEQXとdbxを利用した完成版の6Wayマルチアンプシステム
[写真1]遅延時間の問題も見事に解決されたスピーカーシステム
■ 2台のDEQXで構成する「Master/Slave方式」について。
・Master側のDEQXは通常の3Wayシステムの場合と同様の働きをします。
・Slave側のDEQXは複数のユニット群をまとめる役目を担います。
・KK氏のシステムでは3個の高域ユニット(下図)を1つにまとめています。
[図2]高域ユニット3個の周波数特性
・Slave側のDEQXで3個のユニットが1つの高域ユニットにまとめられました。
[図3]DEQXのSP補正機能によって一体化された高域チャンネルの周波数特性
・「図2」が「図3」となり、一体化する様子が測定結果からも判ります。
・次にMaster側のDEQXでシステム全体の聴取位置での特性を見てみます。
・下の図がルーム補正前の特性です。
[図4]ルーム補正前の再生周波数特性
・聴取位置では部屋の影響が出ていることが判ります。
・Master側DEQXのルーム補正で大きなピーク/ディップを軽く補正します。
[図5]Master側DEQXによるルーム補正後の再生周波数特性
・30Hzから10kHzまでが±3dB程度に入る良好な総合特性となりました。
・厚みのある低域と充実した中域、そして緩やかに下降する高域が特徴的です。
・ホールトーンの再現を目指した特性に近いとも言えるものです。
・KK氏の最終的な音質評価が特性面からも伺えるものとなっています。
・2台のDEQXを使った複雑なシステムをご自身で短時間に完成させました。
・音響測定を手がけてきたKK氏ならではの快挙だとも言えるでしょう。
・多少時間が掛かってもDEQXによる高忠実度再生への取り組みで得られる高揚感と充実感を多くの方にも実感して頂きたいと強く思った今回の事例でした。
文責:クリズラボ・栗原