No. | ユーザー | DEQXの導入機種とシステムの特長 | 掲載時期 |
---|
118 | 山梨県 SF氏 | HDP-4 / 長岡鉄男のDIY精神が原点 / 理想のシステムに挑戦 | 2021年1月 |
[ W400A-HR+GOTOユニットによる3Way-4ユニットのスピーカーシステム ]
[ 3Wayから4Wayに変更したシステムの系統図(準備中の製品を含む) ]
[ オーディオルームの奥にある長岡式バックロードホーンがメインのA/Vシアター ]
過日はコロナ過の中、遠方からお越しいただき、長時間のDEQX調整ありがとうございました。
まずは現状のシステムに至る経過を少しだけご説明したいと思います。
今のGOTO UNIT(ゴトーユニット)を中心としたマルチアンプシステムはMJ「無線と実験」誌の2017年6月号に掲載された高松氏※1 のシステムを拝見して思い立ちました。
※1: 株式会社バッファロー(BUFFALO INC.)のHPで紹介された高松氏(Kurizz-Labo)
高校生の頃「ラジオ技術」誌で高城重躬氏※2 のGOTOを使用したシステムの記事に憧れて興味を持ちましたが、まさか将来自分が手に入れるとは想像もしていませんでした。
※2: 高城重躬氏氏紹介のウィキペディをご覧下さい(Kurizz-Labo)
本格的なオーディオのスタートは長岡鉄男先生※3 のバックロードホーンに傾倒して夢中になったことからです。
※3: 長岡鉄男氏紹介のウィキペディをご覧下さい(Kurizz-Labo)
[ SP-BOX製作工房:メーカーですか(笑)] [ Wユニット用のBOXを真っ二つにカット ]
そんな中、後年ひょんなことからSGー370BLを手に入れ、SGー570、SG-160BLBLと手に入れてしまいました。
しかもこのSGー160BLはあの高城先生が使っていたモノでした。
しかし、GOTOユニットを中心としたシステムについては漠然とした構想程度で具体的なイメージは湧きませんでした。
特に究極とも言えるマルチアンプ方式はいろいろな意味で敷居が高く、極端に言えばアンプは自作かアキュフェーズしか選択肢がないと考えていました。
しかも再生できる帯域幅が狭いGOTOユニットだと最低でも4Way以上になってしまいます。
ところが前述の高松氏のシステムは3Way構成。
これだ!、と思いました。
もちろんアンプをオールアキュフェーズにするのは無理(笑)で、中古を中心にアンプ類を集め出したのは2018年も押し迫った頃でした。
そしてこの頃にDEQXの中古(HPDー4)が出ていることを知り、即購入。
軽井沢の栗原さん(クリズラボ)宅に伺って試聴がてら製品を受取りました。
そしてこの時、6ch同時制御のパッシブアッテネーターを開発中という情報を得ました。
実は、3Wayのマルチアンプシステムに必要なATTはアルプス電気(株)のRK501を3個、タイミングベルトかギヤで連動させた自作のボリュームを考えていました。
また、DEQXはマルチチャンネル対応のデジタル出力で最新のDACを使える魅力があり、最終段に入れるATTも手に入ることになりました。
2019年に入るとマルチの中核(土台)となる低音用エンクロージャーの設計に入りました。
密閉型を目指したので箱だけならそれ程難しくはないのですが、兼ねてからやりたかったSDM(スピーカーダイナミックマウント)構造とDM(デッドマス)の構築※4 でした。
※4: SMDとDMの紹介ページへ(Kurizz-Labo)
小型のシステムならそれほど難しくはないのですが40cmウーファーとなると大掛かりになり、SDMとDMの合計も20kgは超えそうです。
エンクロージャーの製作に夢中になっていた折り、肝心のウーファーユニット(フォステクス:W400AーHR)がディスコンになっていて驚きました。
慌ててメーカーに電話するとラッキーにも3本だけ残っているとのこと、ギリギリのタイミングで確保できました。
いよいよシステム構築が佳境を迎え、DEQXの調整を待つばかりとなった2020年の2月、新型コロナが蔓延し始めました。
そんな中、4月初旬には6chのパッシブアッテネーターが届いたのでシステムに組み込み準備万端。
しかし、出張調整が難しい中、リモートでの調整に切り替えました。
軽井沢の栗原さんとは「Team Viewer」でつなぎ、私のパソコンをリモートで操作して貰います。
合わせてZoomで通話しながら僕は指示通りにマイクなどの設定をしました。
ここで一大事。
測定を繰り返す中でGOTOユニットの特性に疑問符が付きました。
手元のSGー570は上が2.5KHz、そしてSGー160BLは下が6KHzまでしか使えないことが判りました。
これらのユニットを組み合わせると3KHzから5KHzがすっぽり抜けてしまい大きな谷ができます。
ここでTWにSGー370BL(500〜5kHz)をTWとして追加して設定を再調整しました。
ユニットの規格上は3Wayで行ける感じでしたが現実には4Wayで構築するしかありません。
またSGー160BLは測定結果で左右のレベル差が10dBもあり、ユニットの故障も考えられるためメンテナンスに出しました。
ユニットのメンテナンスと4way化に対応するため5月の連休を利用して中高域と高域を分割するL/Cネットワークを作りました。
SGー160BLが戻ってきたのでLCネットワークを経由して追加しました。
変則マルチだけどそれなりの音はしたので手元のETANI ASA mini※5 で測定したらビックリするくらいのフラットな特性でしたが、流石に何かの間違いかと思いました。
※5: エタニ電機(音響用測定機とデジタル信号処理装置の開発・製造)製の音響測定ソフト(Kurizz-Labo)
もちろんDEQXにも測定機能があるので測ってみたいと思いましたが取説を見て心が折れてしまいました。
--------------------------------
そして10月17日リモートでない本格調整の日がやってきました。
午前11時に到着した栗原さんは早速測定を開始。
次々とマイクロフォンの位置を変えて様々な特性を測っていきました。
そして、問題が発覚!
SGー160BLの再生音圧レベルがSGー370BLと比較して10dB低いことが判明したのです。
160BLの修理はボイスコイルの一部ショートが原因でしたが今回は左右共にレベルが低いので減磁なのでしょうか。
修理に出す時間はないのでレベルが高いSGー370BLを自作の抵抗ATTで10dB落とすことにしました。
[ 急遽、手作りの抵抗ATTを製作するSF氏 ] [ 完成した10dBのATTをユニットに接続 ]
DEQX調整は最初にスピーカーシステムを最適な状態に設定し、その後ルーム特性の補正をして完成。既に夕方の4時近くでした。
長時間のDEQX調整、本当にお疲れ様でした。
調整後に出てきた音はほぼ理想のフルレンジのように纏まった音で、左右8本のユニットから出ている音とは思えません。
また、低音はSDMとDMの効果が間違いなく発揮され、ハイスピードな風のような低音は目論み通りだと感じました。
そして、なんと言っても今回のマルチアンプシステムが成功したのは栗原さんの豊かで深いオーディオのキャリアがあってのことです。
そして、6チャンネルのパッシブアッテネーターの導入は今回のキモでした。
超高能率スピーカーに耳を当ててもノイズが聞こえない程の静けさには驚きでした。
今後の課題は、測定で明らかになった40Hzに発生する部屋の定在波対策でDEQXの補正量をより少なくすること。
そして、部屋をもう少しライブな感じにしたいと考えています。
最後に、調整が完了した直後に来宅された音仲間の「W」氏の感想を紹介させて頂きます。
------------------------------
ウーファー凄かったです。
乾いた低音とかスピード感のある低音とかの感じを初めて実感しました。
でも私は高音フェチなので位相が揃った高音の質感が一番気に入りました。
DEQXは使いこなすといい音がするのですね。
------------------------------
栗原さん、ありがとうございました。
山梨県 S.F.
・ 半年ほど前、念願だったスピーカーシステムが完成したとの連絡を頂きました。
・ コロナ過のこともあり、まずはリモートでの基本的な調整をご提案しました。
[ 完成した3Wayシステムをとりあえずリモートで調整 ]
・ 4月下旬、軽井沢から山梨県のSF氏のパソコンを操作してDEQXの調整を行いました。
・ まずは完成したスピーカーシステムの測定からスタートです。
[図1] ユニット保護のため、SG-570は100Hz、SG-160BLは1kHz以下をカットした信号で測定
・ 高域は全て40kHzまでの信号で測定しています。
・ スピーカー測定を終えた段階でユニットに二つの問題が見つかりました。
・ 一つは、ツィーターの左右の特性が大きく異なることです。
・ ツィーターユニット(SG-160BL)の測定結果だけを抜き出したのが下の図です。
[図2] 左右のユニットで6dB以上の特性差がある
・ 数dBの違いはDEQXで補正しても問題はありませんが、6dB以上となると何らかの物理的な故障も考えられます。
・ SF氏も納得され、修理に出すことになりました。
・ もう一つの問題は4kHz前後に生じる大きなディップ(図1の「隙間」)です。
・ SG-570の高域が5kHzまで伸びていることを想定したユニット構成とのこと。
・ しかし、測定結果では左右とも高域が3KHzまでしか出ません。
・ SG-160BLは最適クロスオーバーが5KHz以上とされています。
・ これも実測値からは無理があり、7kHz以上が現実的な利用帯域となります。
・ つまり、隙間が生じる原因は両ユニットの帯域不足から生じています。
・ この結果を見てSF氏は、隙間を埋めるユニットの追加とSG-160BLの修理を即断されました。
・ リモート調整はここで中断。
・ 変則4Wayとなる新たなスピーカーシステムの完成を待つことにしました。
----------------------------------------------------------------------
・ 半年後、「4Way化が完成しました」、との連絡が入りました。
・ 新型コロナの第2波も下火になったことから10月7日に現地での調整を実施しました。
・ 軽井沢から車で3時間。
・ 広い駐車場の一角に建つ大きな倉庫に案内されました。
・ 重い扉を開けて一歩入ると、そこは男のロマンが結実したあこがれの空間。
・ 広いスペースの手前がピュアオーディオで、奥がA/Vシアターとなっています。
[ ピュアオーディオの奥がA/Vシアター ] [ A/Vの視聴ソファ。奥がピュアオーディオ]
・ A/Vシアターのメインスピーカーは長岡式 D-57型 バックロードホーン。
・ 見た瞬間、こんな美しい仕上がりのキットがあるのですか?と思わず尋ねてしまいました。
・ SF氏曰く、「全て自作です」とのこと。ここまで行けばDIYの極致ですね。
・ A/Vシアターに置かれたMX-10(写真)の上に長岡鉄男氏からの年賀状がありました。
・それもそのはず、 長岡氏には何度もお会いしているとのことでした。
[ 1本でステレオ再生ができる長岡式MX-10スピーカー ] [ 長岡式バックロード:D-57]
------------------------------
・ 一通りの見学(笑)を終え、本業のピュアオーディオシステムの測定を開始。
・ リモート調整で判明した中高域のディップを解決するための4Way化が完成。
[ 4Way化用に追加されたL/Cネットワーク ] [ SG-370BLを追加して4Way化された高域 ]
・ L/Cネットワークで分割された二個の高音用ユニットはDEQXから見ると一つの高域チャンネルとして扱います。
・ 3Wayシステムとして測定した結果が下の図です。
[ 図1] スピーカーシステムの周波数特性(緑色の線がDEQXの高域チャンネルの特性)
・ DEQXのスピーカー補正は補正前の基本的なシステムにおいて、各帯域の再生レベルが数dB以内に揃うことがベストな条件です。
・ 今回の測定結果では中域(SG-570)に対して低域が6dBほど低く、高域は5dB高い状態から始まって極端な右肩下がりの特性となっています。
・ SF氏のシステムはDEQXに外部DACを接続されているため、DEQXのアナログ出力で有効なゲイン調整機能は使えません。
・ 低域を3dBほど上げたいところですが今回は許容範囲としました。
・ 2kHz以上の高域はL/Cネットワークを利用して二つのユニットが受け持ちますが、この部分を受け持ち帯域別にレベルを見たのが下の図です。
[ 図2]SG-370BLとSG-160BLの再生レベルの比較と補正量
・ 結論としてはSG-370BL(赤線のレベル)に10dB程度のアッテネーターを入れればSG-160BLとレベルが揃います。
・ SF氏は、SG-370BLの音圧レベルがが110dB/W/m、SG-160BLも110dBと記載されていたため、L/Cネットワークの製作段階ではレベル調整が必要とは考えていなかったとのこと。
・ ところが実測では10dBもの差があるため、抵抗でアッテネーターを製作して頂くことにしました。
・ システムの見学中、SF氏が 「このアンプは自作です」 と言っておられたので、もしかすると抵抗2本のATTは簡単に製作して頂けると思ったからです。
・ 感想文にもありますように氏は即座にATTの製作に取りかかり、30分ほどでシステムに実装することができました。
・ DEQX調整の現場でSPユニット用の抵抗ATTを製作して頂いたのは初めてです。
・ ATTが使用できない場合、図1の高域(2kHz以上)をDEQXでフラット化することは可能です。
・ しかし、全体で30dBのレベル差を強引に補正すればさすがに弊害も出てきます。
・ DEQXによるスピーカーの補正量(4項目の内、特に周波数特性)は理想的にはレベルを上げる方向で6dB程度、下げる方向は20dB以上でも全く問題はありません。
[ L/Cネットワークに10dBのATTを入れた図 ] [ ATTで期待される再生レベルの変化 ]
・ ATTを追加したスピーカーシステムの測定からDEQXの調整を再スタートしました。。
[図3] SG-370BLに10dBの抵抗ATTを入れた状態での周波数特性
・ 帯域別の平均音圧レベルはLowを基準にするとMidが7dBほど高く、Highは3dBほど低くなっています。
・ DEQXは平均値として、Midを7dB下げ、Highを3dB上げる適切な補正を行うことになります。
・ スピーカーの測定結果から反射音を分離、クロスオーバーを決めて補正範囲を設定。
・ 補正フィルターを生成してDEQXに転送すればスピーカー補正が完了。
・ 測定マイクをリスニングポジションに移動してルーム補正のための測定を行います。
・ 最初はスピーカー補正用フィルターを適用しない状態、つまりDEQXを使わない時の特性を測ります。
[図5] スピーカー補正をしない場合のリスニングポジションでの周波数特性
・ 全体としては500Hzから2kHz付近の中域に6dB程度のピークがあり、60Hz以下と3kHz以上が大きく落ち込んだ特性となっています。
・ スピーカー補正フィルターを適用し、10個のパラメトリックEQによるルーム補正を実施したのが次の図です。
[図6]スピーカー補正とルーム補正を実施した場合のリスニングポジションでの周波数特性
・400Hz付近の3dB程度の落ち込みを除けば1kHz以上が僅かに下降する理想的な特性に仕上がったと思います。
・ 最終的な評価は感想文にお任せしますが、強靱な土台に支えられた爽やかな中高域が大きな魅力です。
・ DIY集大成の結果と言えるのではないでしょうか。
[ ピュアオーディオセクションの全景 ] [ オーディオ部から見たA/Vシアター方向]
---------------------------------------------------------------------
・ DEQXはスピーカーと室内の音響特性を劇的に改善します。
・ 既製品のスピーカーシステムから、DIYを駆使したマルチアンプ方式まで。
・ DEQXで貴方もエンジョイオーディオ!
クリズラボ:栗原
・ 既製品のスピーカーシステムから、DIYを駆使したマルチアンプ方式まで。
・ DEQXで貴方もエンジョイオーディオ!
メニューに戻る