■ ご了解頂いた方々のシステムと試聴リポートを掲載させて頂きました.
2015年4月:大阪ST氏 XS-1ボードの追加と初期調整
(2015年5月4日掲載)

■ DEQX User's Report に初登場の大阪のST氏

■ でも、DEQX Clubでは最多掲載賞候補筆頭の通称「セブ太」氏

 
 
   <このスピーカーのために設計されたような素敵なリスニング空間>

■ フロントロードホーン付き大型マグネットの28㎝コーン型ウーファーが2発

■ 窒化チタン材の65㎜径ダイヤフラムのホーン型中高音ユニット

■ 発売当時、価格も含めて究極のスピーカーと呼ばれた製品です

■ しかし、これを鳴らすのは一筋縄ではいかないご苦労(戦い?)があったとか

 
  <ONKYO GrandSepter GS-1:1984年発売のオールホーン型 @100万円>

■ HDP-4を購入されたのは3年程前ですが、今日まで調整の依頼がありませんでした

■ ところが、今回、USBボードを試したいとのお話しを頂いた日、たまたま大阪に居たのが運の尽き(笑)

■ 朝の9時からなら可能です、ということで早速お伺いしました。

完了の目安は?と聞かれたので、午後1時には終わります。とご返事を。

大阪のST氏、別名「セブ太」さんとは3年前からのメル友ですが実は今回が初対面。

■ 写真で見ていた素敵な空間にGS-1が鎮座していました。

■ 早速マイクを立てて測定開始。12時半には全ての作業を完了しました。

■ その一週間後、筋金入りのGS-1ユーザーから嬉しい感想文が届きました。



オンキヨーのグランセプター(GS-1)を手にしたのは25年も前の事。

ひょんなきっかけからGS-1と格闘する事になりましたが、一度たりとも満足する音で鳴ってくれませんでした。

タイムドメインの思想を商品化したというものの、実際はLCRのネットワークですから位相は回転している訳です。

また、超制動設計のために減衰した低域を補うため、これまたLCRの補償回路を内蔵しており、これも位相に影響が出ている設計です。

なんとかしたい思い、高価なパーツによるLCRネットワークや外付けCRの自作EQなどを試しましたが、音色やエネルギー感は改善されるものの位相的な違和感が最後まで残りました。

そうした中で、世の中にはデジタルチャンデバや、デジタルイコライザーなるものが出始めましたが音質的にはまだまだ使えたものではありませんでした。

また、デジタル機器の進歩は早く、直ぐに性能が陳腐化するので結局導入に至らず長年過ごしてきました。

いつの日か、このGS-1を完全デジタルの、出来れば位相がリニア-なFIRフィルターを使った機器で鳴らしてみたいという夢は描き続けておりました。

そんな折り、2011年末にオークションでDEQX EXPRESSを手に入れました。

その半年後に発売された新製品のHDP-4を導入し、現在に至ります。

HDP-4を手に入れてからは、ネットで栗原社長のアドバイスを聞きながら長期休暇の度に測定と調整を繰り返してきました。

この3年間、多分クレーマーかと思われながらも、何度も社長にメールをしては調整、そして新たな疑問のメール、その繰り返しでした。

いつか機会があれば調整をお願いしたいと機会をうかがっていたのですが、それがやっと実現出来ました。

 
    <再生機器群:中央の上段がHDP-4、その下がDELAのN1A>
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今回、改めて社長の調整を見ていて驚いたのは、今まで自分が考えていたこと(先入観?)とは全く逆の方法だった事です。

まず測定マイクは専用の補正データーが必要とのことであり、スピーカの測定はかなりシビアなものだと思っていました。

このため、マイクの位置は距離はもちろん、高さや角度など、考えられる限り厳密にセットして測定していました。

ところが、栗原社長の測定ではマイク位置がかなりラフだったんです!
                           ・・・・・失礼!

確かにスピーカーからの距離は厳密にとの話もありましたが、角度や高さは正直言ってメジャーが曲がっている状態で、端から見ている私にはおおよそ正確な測定とは言えない状況でした(笑)。

・・・ですが、実は音質に影響する調整箇所は別のところにあったのです!

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まず、各ユニットの測定データー見ながらクロスオーバーを決めています。

これは私の様な素人判断とは違うアプローチでした。

私は測定データーから両ユニットの平均的な中点を取って600Hz/96dB/octとしていましたが、栗原社長はこれを450Hz/48dB/octとしました。

高域ドライバーの軸上で測定している事からも出来るだけクロスを下げたいという思いがあるのだと思います。

私はスロープを急峻に切りたいという欲望が先に立ち、500Hz以下はGS-1の場合96dB/octでは切れないので、更に低い450Hzは眼中にありませんでした。

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次に驚いたのはルーム補正です。

ルーム測定の段階では既にスピーカー補正を済ませているので、軸上で聞くのであれば中高域の特性はフラットなはずです。

従ってルーム補正ではリスリングポイントで乱れる低域のみを補正するべきだと思い込んでいたのですが、なんと5kHzから上を超大胆に補正されています。

結果としての補正カーブだけを見たらとんでもない音(笑)がしそうです。

実は、その時は黙っていましたが、栗原さんが帰られたらこの高域補正は絶対元に戻すつもりだった事は内緒です。

ルーム補正が完了した状態で早速愛聴盤を聴いて驚きました。

・・・・・なんと!、とっても自然なんです。

私にとってはあり得ない補正カーブだけにビックリします。

DEQXのルーム補正で使える10個のポイントを使い切っての調整でしたが、わずか数分でここまで追い込まれるバランス感覚はやはり豊かな経験によるものなんだと感心しました。

このルーム補正で音質上最も効果を感じたのは、ボーカルや楽器の音像の大きさが圧倒的にリアルになったという事です。

大きさや位置が明確にわかること、そして空間が上下前後にまで広がり、かつ正確に再現される事です。

もちろん周波数バランス(特に低域)の改善はとても顕著ですが、私は音色とかバランスよりも位相の乱れが気になる傾向にあり、DEQXによるこの面での改善効果は他には置き換えられないものだと思います。

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さて、今回はもう一つのテーマがあります。

BUFFALO((株)バッファロー)が発売したデジタルミュージック・ライブラリーである、DELAブランドのNASを導入したことです。

現用機であるネットワークプレーヤーを排除してDEQXとこのDELAをUSBで直接接続することが出来るか実験することでした。

結果は、DELAがDEQXのUSBボードをなんなく認識して直ぐに音が出ました。

現状では一部挙動に課題はありますが充分使える事が確認出来ました。

それよりなによりこのダイレクト接続で音質が格段に向上したのです!

DEQXのUSBボードが非同期である事やメイン基板への通信がI2Sである事が効いていると思われますが、情報量、空間の広さが圧倒的です。

使い勝手に勝るLINNのDSでしたが、残念ながらお蔵入りとなりました。

未確認ですが、問題の挙動については情報共有の観点から「DEQX CLUB」にアップしておきます。

栗原社長には改めて今回の訪問調整について、お礼申し上げます。

 
      < ONKYOのGS-1とYoshii9(筒状のスピーカー) >
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ここからは後日談です。

実は栗原社長が行った、高域の大胆な調整箇所を排除して聴いてみました。

すみません、私が悪うございました・・・・・

社長は5kHz以上の高域2箇所で、5~7dBもの急峻なカットをされていました。

減衰させた帯域は絶対に情報量が減っているはずなので、元に戻せば良くなるはず、と、タカをくくっておりましたが、結果は全く逆でした。

カットをしないと逆に情報量が減り、変な落ち込みすら感じます。

部屋の影響によるピーク成分が他の帯域をマスキングしているのでしょうか。

とにかくこのルーム補正の効果は絶大です!

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DEQXは誰にでも使いこなせるという機械ではなさそうです。

しかし、きちんと扱わないとせっかくの効果が出し切れません。

もちろんホビーですし、機器の買い替えもあるので自身で調整できる様になる事は必須だと思います。

その時のためにも、一度は栗原社長の調整を横で見て体験する事を強くお勧めしたいと思います。

DEQXの調整に対する考え方と方法に幅が出来ると感じました。

実は、今回の調整に先立ち、改めて過去のユーザーレポートを読んでみると、中にはかなり時間をかけて格闘されている例も見かけます。

だとすれば、我が家のGS-1という特異なスピーカーが、特殊な構造の部屋に置かれている条件では、調整もかなりの大変だろうと考えていたのです。

ところが当日はいともあっさり(違いますか?)調整を終えられたのでいささか拍子抜けした事も事実です!

ルーム補正では通常実施されていると思われる、音を聴きながらの微調整もなく、一発で完了。さすがに経験豊富なプロの技と感心致しました。

今回の調整を受けるまでは・・・・自分で調整をしたいという思いから、改めてマイクを購入しましたが、もしかすると出番は無いかもしれません・・(笑)

 
      <いかにも演奏ステージといった風合いの再生空間>

今回の調整では、同じONKYOのスピーカーを使っている鳥取県のHTさんが突然尋ねて来られました。私とは初対面のDEQXユーザーさんですが、貴重な出会いと情報交換が出来ました。こちらも、ありがとうございました。


                             大阪のSTより


                            Kurizz-Labo 栗原 記

■ 3年間で165回のメールの一問一答はそのまま一冊の本になるのではと思います。

■ STさんのグランセプターGS-1に寄せる熱い思いが伝わってきていました。

■ ここまで惚れられたGS-1も幸せだと思います。

■ 物量と英知が注ぎ込まれた名器GS-1で音楽を鳴らしたい。と、私も思いました。

■ 質の良いユニットであれば中高域はどうにでもなる。しかし、低域はスピーカーの基本設計に基づく本質的な能力がなければDEQXの補正にも限界があります。

■ GS-1は過制動設計で元々低域が出にくい上に、低域をブースト(低域以外のレベルを下げる)するネットワークを外したのでDEQXによる補正が必要。とST氏から伺っていました。

■ 今回の調整ではそこが最大の関心事でした。

■ あらゆるソフトを忠実に再現するための低域のレスポンスは最低でも40Hz、出来れば30Hzまでを-3dB以内で再生できることが望ましいと考えています。

■ しかし、高い分解能を維持しながら30Hzまでの低域を大きな音圧レベルで再生できる能力を確保することは大変に難しいことです。

■ DEQXのEQで低域をブーストしてもパワーアンプやスピーカーシステムにその能力がなければ歪みを発生するだけで、良好な音質を確保することは出来ません。

 
    <GS-1の測定結果:確かに100Hz以下が急激に低下している>

 
  <TAD/TL-1601a(250㍑密閉箱)の測定結果:30Hzまで出ている>

■ 上の図はスピーカー単体の測定結果で、GS-1とKurizz-Labo製SPの特性です

■ GS-1で40Hzを-3dBで再生するためには12dB程度のブーストが必要です。

■ 12dBというのは電力換算では16倍です。ブーストした周波数に一致した音は、通常だと1Wのパワーが出る場合16W出ることになります。10Wなら160Wが出力され、スピーカーユニットや構造体がこれに耐えられるかどうかが勝負となります。

■ ただし、大出力が発生するのは再生する音楽の中にその帯域の成分が大音量で存在した場合に限られるため、いずれにしても瞬間的な現象であり、これによってユニットを壊すような可能性は極めて低いことは確かですが、10dBを超えるような補正を行う場合はユニットの耐入力などを確認する必要があります。

■ ルーム補正の段階で試しに低域を12dB程度ブーストしてみました。

■ そして、低域チェック用に使用している厳しい音源(※)を再生すると、GS-1は何事もなくこれを再生してくれました。
※ Great Voices(Reference Sound Edition)の Evie Sands:While I Look At You

■ このCDはかなり低域過多のマスタリングが行われていますがこれが気持ち良く再生出来ないとシステムの低域には問題有りと判定できます。また、Evie Sandsのボーカルが分厚い低音に負けず、クリヤーで魅力的な声に再生出来れば中高域もOKです。

■ かなりの大音量にしてもGS-1からは歪み感の全くない明瞭な低音が再生され、ボーカルも見事に再現してくれます。

■ 最大の懸案事項はこれで完全にクリヤーできました。GS-1、さすがです。

■ 後は全帯域における部屋の影響を効果的にキャンセリングするEQ設定すればルーム補正は完了です。

■ 大阪のST氏ことセブ太さんの長年のチューニング(葛藤?)のお陰で、システムのレベル関係も万全。今回はいきなりDEQX調整から取りかかれ、お約束の時間(1時まで)を30分を残して無事調整を終えることが出来ました。

■ 166回目のメールが直ぐには来ないことを祈りつつ(笑)、DEQXの本質を突いた貴重な、そして嬉しいレポートを掲載させて頂きます。

■ ありがとうございました。

              Kurizz-Labo店主:栗原

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