|
|
● スピーカーシステムの特定の帯域で逆相接続があった事例
・ そもそも、スピーカーの「逆相接続」とは何でしょうか?
・ スピーカーはプラスの端子にプラスの電圧が加わると振動板が前に動くように出来ています。
・ 手元の1.5Vの乾電池をウーファーにつないで振動板の動きを見て下さい。
(SPシステムの場合、ウーファー以外は直流がカットされるため、電池では動きません。)
・ 実際にスピーカーに加わる電圧は直流ではなく、次のような形の交流(音楽)信号です。
<スピーカーに加わる電気信号の波形>
・ 下の図はある瞬間の振動板の動きを示したものです。
<正しく接続されたスピーカー> <R側が逆相に接続されたスピーカー>
・ センター定位で歌っている歌手の声が左の図では中央から聞こえますが、右図では・・・?
・ 実際にスピーカーケーブルを逆相に接続をして何度も聞いてみて下さい。
・ そして、その時の音の出方を感覚として覚えて下さい。
・ 逆相に接続する方法はアンプの出力かスピーカーの入力でプラスとマイナスを逆につなぎます。
・ この時、左右どちらか一方のみを逆相にします。左右とも逆にするとそれは正相です。
・ DEQXをお持ちの方はPCをつないで「DEQX Control Panel」を出します。
・ 画面の極性切替ボタンを押すとそのチャンネル(帯域)のスピーカーが逆相でドライブされます。
・ マルチアンプ方式の場合、帯域によって影響の度合いが違いますので実際に体感して下さい。
・ スピーカーの中央で音の違いを確認してから、左右ではどのように変化するか確認します。
・ ソロボーカルなどの中央に定位した録音のソースが分かり易いと思います。
・ 実験が終わったら必ず全てのボタンを「+」の状態に戻しておきます。
-------------------------------------------------------------------------------
・ 下の図は実際のシステムで闇に潜む逆相接続が見つかった例です。
・ B&Wの802Dというスピーカーを一台のアンプで鳴らすシングルアンプシステムです。
・ 802Dは低域と中高域を分けて接続出来るバイワイヤー方式に対応しています。
・ この方式は確かにメリットもあるのですが、接続が複雑になるため、注意が必要です。
・ この例では[図1]の青丸部分(R側の低域)が逆相接続と判明しました。
・ ところで、正相や逆相というのはあくまでも影響のある相手に対して作用する現象です。
・ 今回のシステムの中高域は左右とも正しく接続されており、正相の関係になっています。
・ そして、左側は中高域に対して低域も正しく(正相)接続されています。
・ 最終的には右側の低域のみが全体に対して逆相だったことが判りました。
・ 今回の例には大きな落とし穴があります。
・ それは音楽を聞いただけではこの逆相接続が容易には判断できないことです。
・ ならば問題が無いのかと言えばそうではなく、実は大きな問題があります。
・ 802Dは[図2]にあるように、低域側のクロスが350Hzに設定されています。
・ 低音域は定位感や逆相による干渉も弱く、音で位相を確認するのはかなり困難です。
・ また、右chに注目すると逆相による影響は[図3]の丸で囲った狭い範囲に現れます。
・ しかし、ここは音楽の基本となる帯域で男性や女性ボーカルなどでも大切な帯域です。
・ 音楽には大切ですが、耳の敏感な帯域(500Hz~5kHz)とは異なります。
・ つまり、「耳では判りにくいが音楽には大切な帯域」に影響が出ることになります。
・ その結果、ボーカルなどの低音域だけがぼけたりするやっかいな症状として現れます。
----------------------------------------------------------
・ 改めて今回の例でDEQXによる測定で逆相を発見した経緯を見てみましょう。
・ スピーカーを測定し、キャリブレーションを行うと[図5]の特性が現れました。
・ 左右で特性にこれほどの差が生じるのは異常です。
・ 正常なB&Wならあり得ない特性なので、もしかすると故障かも・・・・
・ 測定を中断して原因を探すと、4本のコードの内、1本だけが逆に接続されているのを発見。
・ 万一故障ならこの日の測定は中止して修理を行う必要があります。正直ホッとしました。
・ 正しく接続して再び測定してみると[図4]のように左右が揃った正常な特性となりました。
----------------------------------------------------------
・ 今回、逆相接続が発見できなければ「何か変だ」と思いながらも聴き続けていたかも・・・・
・ オーディオ装置は音楽を聴くための道具です。
・ しかし、人間の耳はもの凄く「いい加減」です。
・ 風邪を引けば低域の感度が極端に低下します。
・ その時の気分や、人からの情報次第で音の良否の感覚も大きく違ってきます。
・ 昼と夜では音量感が全くことなります。
・ 少しの音量変化が音質に大きく影響します。
・ 製品の価格が判っているとそれだけで良否の判定に影響します。
・ 今回の事例では、そのまま聴き続けていた状態でスピーカーケーブルを交換し、偶然にも正しく接続して逆相が解消されれば結果は「低域のモヤモヤが解消し、定位感も向上する素晴らしいケーブル」との評価になることでしょう。
・ これって何だか変だ!と思いませんか?
・ オーディオは物理と電気と音響の理論、そして多くの人の努力と歴史から成り立っています。
・ 測定器などを駆使して装置の基本(Basic)を確認することは全てに優先すると考えます。
・ DEQXは測定器であり、SPとRoom補正を通じて最終的には感性に訴えるツールです。
・ 積極的に活用して素敵なオーディオライフを楽しみましょう。
クリズラボ店主・記
| |
|